訓練

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季節が初夏になると、農繁期だ。どういうカラクリか、雨が降り、大地が一面緑に染まる 草を抜き、耕し、種子を播いたり苗を植えたり 燕去(えんきょ)市街から遠いこのドームにも手作り地は沢山あるし、牧草の準備もしないといけない 俺たちは日中は農作業に駆り出された。農作業は農作業で、下手なトレーニングよりキツイ 一度お使いでみんなで燕去(えんきょ)市街まで出たが、燕去(えんきょ)市街はすごい人で、冒険者の宿もやっと一部屋取れたところに詰まって寝ることになったくらいだった サマハナの話では、出稼ぎ集団には出稼ぎ集団のギルドがあり、需要に応じてこまめに人数調整をしながらシャンバラ内を移動していくそうだ。市街ではなく、住宅街の端や上層のちょっと使いにくいフロアにギルドが管理する宿泊所があり、必要に応じて仮組みの小屋が立ち、炊き出しも行われるという。その炊き出しや、風呂の用意などを行うのもギルド員の別部隊で、全体が移動する前に次のエリアを掃除して使えるようにしたり移動した後の後片付けなども行うという ギルド員じゃなくても農繁期の郷ではいくらでも人手がいるので、小遣い稼ぎをしたい若者も集まるし、それこそ子供でもかまどの灰かきや小物の洗濯、ゴミ拾いくらいはできるので、人はどんどん集まり、とにかくドーム全体が色めき立っている 市が立ち、物売りの屋台が並び、色街にもどっと人が増えていた。冒険者ギルドの依頼リストもすごく増えている 俺たちはエマの荷物を燕去(えんきょ)のエマの友人宅に届けてから、頼まれていた夏野菜の苗や種子を買い込んだ。それを一旦宿に預けて、皆んなで市を見に行く 市場はすごい人で祭りのようだったが、サマハナが言うには夏から秋の収穫期とその後の豊穣祭の季節が本当の祭りなんだそうだ。出稼ぎ集団も、この郷に留まって秋の収穫期までいるグループと、次の郷の田植えに向かうグループに分かれるという 秋になれば収穫をする出稼ぎ集団がやってくる つまるところシャンバラは通年農繁期なので、通年何処かには仕事があるのだ またそれとは別に春の郷を廻って花見を続ける観光のツアーや、花期にあわせて蜜を集めて授粉を手伝う養蜂家のギルドなどもあるという 市場やその周りの屋台では、焼肉やケバブサンドのようなもの、蒸しあがったばかりの肉まんじゅう、冷たくて甘い飲み物や果物の飴、おもちゃやアクセサリーを売る店などがあり、全体的に懐かしいお祭りに似ている お祭りと違うのは衣服や籠、食器、生地などの日用品を売る店や、肉や野菜、調味料などの食品を売る店も多くあることだ ユニとカナは生地や糸を沢山買い込んでいた。それからビーズなどの細かな装飾品用の素材と、絨毯まで 「ちょ、持って帰ること考えてだな?」 俺の小言(ツッコミ)は華麗にスルーされ、彼女たちの爆買いは止まらなかった
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