ニア

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「いや、流石にニアさん、いや、ニアも一緒にこの部屋ってのはないでしょう?」 俺はピンチだった。食後の腹ごなしと言われて、みんなでニアに組み手の型などを少し教えてもらい、夕食前に風呂にでも入ろうかと準備をしに部屋に戻ろうとしたら、ニアまでついてきたのだ 「え?だってこの部屋10人位は泊まれるっしょ?まだスペースあいてるじゃん。なんでダメなの?」 ガチャリと重そうな装備が入った袋を床に置き、ニアが口を尖らせる 「スペース的には大丈夫でも、ニアはギルドマスターでしょう?個室でゆっくりした方が」 「そ、そうですよ!ここはほら!ヒロキさまもいるし!」 「えー?でも5人中3.5人は女の子じゃん!」 サマハナが少し傷ついた顔をした 「………0.5…」 「なによ。あたしがいると都合悪いわけ??」 思わず俺は振り返ってみんなを見た イチカは肩をすくめ、ユニはゆっくり頭を振った。カナは俺の袖にひっついている。サマハナはまだ0.5扱いされた衝撃から立ち直ってない 多数決でも2対2(1棄権)か……… 油断した隙に、部屋に入られてしまった。ちゃっかり奥の壁際を、陣取られてしまう。俺のスペース…まあ、他のみんなより広く使わせてもらってたし、仕方ないか。なんか、もう、会ったばかりだけどこの人にはかなわない 俺は諦めて、荷物を寄せてニアのスペースを確保し、風呂の用意をはじめた ………そもそも、みんな当たり前のように一緒に風呂に入っているけど、(やまと)は混浴文化なんだろうか そう思って、ニアに聞いてみる 「あの、ふと疑問に思ったんですけど、(やまと)って基本混浴なんですか?」 「「「いまさら???」」」 思いがけずみんなから一斉にツッコミが入った 「いや?地域によるよ?あと、信仰ね」 ニアの冷静なレス 「冒険者ギルドの風呂は(やまと)中で実質混浴の所が多いけど、すいてれば貸し切りにも出来るし、宿主に頼めば時間帯で男女別にもしてくれる。ひとりで入ることも出来る。ああ、街区A出身だと戸惑うか」 「………いや、ヒロキさまは最初から混浴に馴染んでました」 「当たり前に一緒に入ってくるから、あたしは内心驚いた」 「………転移者は混浴文化圏から来たのかと思ってました」 ええぇ??疑問に思ってたなら突っ込んでよ! 「(やまと)は乱婚傾向が強いから、そのへんがオープンなんだよ。妊婦はどこでも大切にされるし、パートナーがいない妊婦なんて無茶苦茶モテる。でも出生率低いから、パートナーを作ってもあんまり性別のこだわりがないんだよね」 ちょっと意味がわからない 表情を読んでか、ニアは少し詳しく説明してくれた 「つまり、男女の組み合わせにこだわらないんだよ。女同士でも男同士でも、なんならグループでもいい。パートナーは持たないのも自由。裸はそんなに特別じゃない。だから風呂もきっちり分けない感じ」 ………それは自由だな 「それでも不思議と半分くらいのカップルは男女で一対一になるんだけどね。特にシャンバラの市民(シチズン)は、伝統的(トラディショナル)家族(ファミリー)を作りたがる傾向がある。祖父母をトップにしたある程度まとまった人数の家族(ファミリー)ね。これは農地の管理があるからだと思う」 「テロスだと、結構男女の役割が分かれてるよ?男は海に出て漁をしたりで、女は浜で海産物の加工したりしてる。年寄りと子供も女の手伝い」 「テロスはね。海の事故で人が死にやすいから、(やまと)の中では変わってる地域だよね。あたしはテロスも知ってるから、サマハナがあそこを離れたかったのもわからなくはない。テロスで未分化だと暮らしにくかったでしょう。男は男らしく、女は男の帰りを待つ文化だからね。それに国自体が貧しいしね」 ニアの目が心なしか優しい 「まあ、だからヒロキみたいなナチューレは、どれだけ好きに女の子食べ散らかしてもうらまれないよ!やったね!」 ………それは喜んでいい事なのか? 「あ、もしかして男色の方がいいくち?」 ………正直考えた事もなかった 考えこんでいる間に、ニアの風呂の用意が終わったらしく、高らかに宣言された 「じゃ、みんなで風呂に行こう!」
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