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まあ、今更、女性がひとり増えたところで変わりはない
今日は洗濯するものもないので、みんなで洗いっこしてのんびり風呂につかる
「いやーやっぱり燕去の風呂はいいね」
「結構地域差あるんですか?」
「地域差っていうより、たまたまこの辺りは湯量が豊富でね。普通はギルドの風呂はここまで贅沢じゃないよ」
そりゃそうか
「でも、まあ、シャンバラはこういうお湯たっぷりの風呂が多いかな。寒い地域が多いしね。テロスは川で身体洗うのが普通だよね」
「うん。あちこちの川辺に沐浴場があるよ。真水で流さないと塩に負けるしね」
「アガルタなんかだと、風呂でもお盛んな人が多くて、お国柄はあるなぁと思うよ」
お風呂てお盛ん…なんかすごいなぁ
「………で、ヒロキはどうなの??上手くやってる??」
な、何を???
唐突に聞かれて、文脈が分からず混乱する。なんの事だろう?まさか、いや、でも
「それが全然なんですよー」
カナが口を開いた
「街区Aにいた時は結構頻繁………だったのに、はじまりの部屋からこっちは、みんなで一度きり!2人きりになれないからかなぁとか考えてはみたんですけど、それとなく2人きりになろうとするとみんなを呼んじゃうし」
………カナ………待って………
「本当。最初にああだったから、ちょっと期待したのに、全然。わたしは2人きりでもみんなとでも構わないんですけどね?」
ユニ………?
「なんか、嫌われるような事、しちゃったかなぁって。ほら、あたしこんな見た目の割に胸ないし、あの、あれが初めてだったから」
嘘………イチカ………マジか
「みんな仲良く寝てるから、そーゆーことしないのかと思ってたよ!僕はヒロキならしてもいいよ?!」
そーゆー問題じゃないよ、サマハナ
流石に俺も赤くなり、ちょっと隅に寄った
「なんだ。ダメじゃん、ヒロキ。誘われたら断る自由は勿論男女ともあるけどさ、ナチューレなんだから、積極的にいくのも嗜みだよ?」
「………マジすか?」
「ん?マジってなにが?」
「その………嗜みってやつ」
ブハッと豪快にニアが笑った
「転移者だな!!昔の仲間を思い出したよ!ヒロキの住んでた国は、基本的にパートナーとしかしない文化なんだよな、そういえば。あたしの仲間だった転移者も、最初はあたしとしかしないから困惑したよ。大丈夫大丈夫。そのうち慣れるよ。とりあえず、恥ずかしいなら、個室取ればいいんじゃ?今の季節宿も空いてるから余裕でしょ」
「………そういう問題じゃ………」
小さく抗議しかけたが、カナが遮った
「いいですね!わたし、宿の人に頼んできますね!」
カナはさっさと上がって行ってしまった
「嫌じゃないなら応じてあげなさいな。特に奴隷は、妊娠するのが一番早く市民になる方法なんだから」
「え??そうなんですか?」
「そうよ。ナチューレの妊娠は慶事だからね!特にナチューレ同士なら子もほぼナチューレ確定だし。カナを手元におきたいのかもしれないけど、それならカナが良ければ産後復帰もあり得るし」
「いや、まだ俺、子供なんて」
そう。うろ覚えの般若心経を唱えながら、ムラッとする気持ちを抑え続けていた訳には、羞恥心だけではなく避妊手段がないこともあった。はじまりの部屋の後、寒さに負けてついつい過剰に暖めあったあと、「………これはマズい」と真剣に思ったのだ。いわゆる賢者になって考えた結果、懸命に我慢し続けていたのに………
「だから、子供が出来るのはめでたいんだよ?カナやユニは、子供が出来たら市民になれるし、イチカだって、子供産んだら生存権が発生する。ヒロキもね。時を戻すのは大変だから若いうちに年齢停止処理受けた方が身体への負担も少ないよ?」
「え?それって、さっき聞いた不老不死、ですよね?」
「まあ、ヒロキたちの感覚だとそうだね」
「すごくお金かかるんじゃ?」
「まあ、それなりにお金はかかるけど、祝い金でまかなえるよ?」
「え?」
「え?」
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