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ひとめぼれ
三崎くんをはじめて見かけたのは、入学して間もない頃だった。
遅咲きでまだ桜が残っていた。
学校前のこの桜並木を歩いているときに、前を歩いているのが三崎くんだった。
風が強く吹いて桜の花びらが舞った。
それが三崎くんを覆って、何枚かの花びらが頭にくっついていた。
立ち止まってフルフルと頭を振るけど1枚だけ残ってしまっている。
なんだかその姿がかわいらしくて。
男の子にかわいいとか失礼だけど、必死になってる姿がなんだか気になったのだ。
横を通りかかった時、まだ悪戦苦闘していた。
「ここに1枚ついてますよ」
わたしの頭で場所を指しながら声をかけた。
びっくりした顔してたけど、はにかみながら、ありがと、って。
頭に手をやるけど、中々花びらの場所に手がいかず。
思わず手がのびて髪の毛に触れてしまった。
「あっ、ごめんなさいっ。なんか、取りにくそうだったから」
ビクッとして体が揺れたのを見て、厚かましかったなと恥ずかしくなって、失礼しましたと言ってその場から走って学校へ急いだ。
それが、三崎くんを気になり出したきっかけだ。
多分、ひとめぼれだ。
あのはにかんだ顔が忘れられなかった。
肌は少し日に焼けて、筋肉質な感じでスラッと背が高い。髪の毛と目の色は焦げ茶色。
そんなに長い時間見ていたわけでは無いけれど、仕草や表情が目に焼き付くほど、印象的だったのだ。
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