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誤解
「なんでっっ」
放心状態の三崎くんがハッとしたように戻ってきた。
なんでって、見てればわかるよ。
わたしが三崎くんを見ているように、真紀を見ていること。わたしとは絶対に目が合わないんだから。
「なんで、かな…」
言葉を封印するしかない。わたしの気持ちは三崎くんに伝わらない方が良いと思う。
「やっ!そうじゃない。違うっ。違うから!」
普段の三崎くんからは想像できないくらいに、焦っている。
「大丈夫だよ。誰にも言わないし。勿論ふたりにもーー」
「だからっ、違う」
わたしの言葉に被せるように否定した。
「俺、安藤のことなんて、別に好きじゃない。」
わたしの目をみつめて言った。
え?
ハッキリと聞こえた。好きじゃないって。
そうだったんだ。真紀を好きわけじゃなかったんだ。
じゃあ、ただ単にわたしのことが好きじゃないから目を反らされていたんだろう。
「そっか。勘違いしてた…
いつも真紀を見て切ない目をしているように見えたの。ごめんね、勘違いか…」
三崎くんの顔を見ると、また、切なそうな目をしていた。
これ以上は一緒に居づらくて。
「あ、あの、わたし先に帰るね。真紀たち先に行ってるから帰るってLINEするから。三崎くんは追いかけたら間に合うと思うっ。
じゃっーー」
早口で喋って駅に向かおうと小走りしたら、後ろから右手を掴まれた。
見ると三崎くんがわたしの手首を掴んでいた。
「ごめん。ちょっと、こっち来て」
三崎くんはわたしの手首を掴んだまま、通路の端の方へと歩いていった。
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