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「ヒュー~~」「やばっ」「すげ~」
見知らぬ誰かが囃し立てる声が聞こえてきた。ふたりだけの世界にいた気分だったけれど漸く現実に戻ってきた。
なんて事をしてしまったんだと我に返る。
ポリ、と頭を掻く三崎くん。
「と、取り敢えず、手を、離してもらえませんか…」
三崎くんを見上げて懇願してみる。
「んー… それはいやかな。」
「えっっ」
「こうしよ」
そう言って三崎くんの左手はわたしの右手首から手のひらにスライドし、手を繋いだ。
さらりと照れるような事を口にするから、何も言えないでいると、三崎くんは繋いでいない方の手を、ズボンの後ろのポケットに入れてスマホを取り出した。
アプリを開いて素早く文字を打ち込むと、またポケットに仕舞った。
「まだ、時間大丈夫?今6時半過ぎたとこ」
「あ、はい。だいじょぶです」
「ふはっ、日本語覚えたてのひとみたいになってる。」
三崎くんがわたしを見て笑いかけてくれている。
「で、敬語になってるし。春樹が敬語はやめよって言ったんじゃないんだっけ」
ニヤリとわたしの顔を覗き込むので、恥ずかしくて目を反らしてしまう。
「っ、だってっ、そんな近くで見られたら、恥ずかしいよ…」
目を反らしたまま呟くように言った。
「ふ、ごめん、ごめん。つい、嬉しくて。なんか俺舞い上がってる。まだ時間良いなら、屋上の庭園に行ってみない?」
コクンと頷くと、手を繋いだまま屋上へ行くためエレベーターに乗った。
ここは大勢のひとが行き交う場所。
視線が痛かった。同じ学校の女の子が三崎くんを、そして、隣にいるわたしを交互に見たりヒソヒソと話しているような気がしたから。
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