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「……お前さ、前っから言いたかったんだけど」
三崎くんはわたしを見ずに言う。
「その抱きつき癖どうにかしろ」
!!!
「えー、今のはわたしじゃない」
真紀が三崎くんに抗議をする。
うん、今抱きついたのはわたし。
抱きついたりって女子ではよくあると思う。
「わかった!うらやましいんでしょ」
何てことを…
「ごめんっ、三崎くん。今抱きついたのはわたし。ちょっと嬉しいことがあったから」
チラッと三崎くんを見ると、耳まで紅くなっていた。
「う、うるせー。」
「ふふん。ま、いいや。わたし用事思い出したから、部活戻るね。さくら、また明日」
「えっっ!真紀、一緒に走ってくれるんじゃなかったの?」
真紀は、にこっとするとわたしに耳打ちして颯爽と走って行ってしまった。
何だか気まずい…
「桃谷さん、めずらしいね。こっち走るの?」
ううう… 三崎くを目当てにグラウンド側に来たとは恥ずかしくて言えない。
「うん、だけど運動部の人たちの邪魔になりそうだからいつもの方に行こうかなと思ってたとこ」
「邪魔になんかならないよ。」
「みっ、三崎くんはランニングしたりするの?」
「あー…オレはいつも校舎側とコートの周りかな。」
「そうなんだね。わたしもいつもは校舎側なんだけど、今日は気分転換しよっかなと思ったんだけどね、やっぱ、やめとくよ。
じ、じゃあ、わたし戻るね。」
「あっ、待って」
トクトクと心臓が早く動いているのがわかる。
三崎くんとこんなに間近で話すのは1日くらいで慣れるはずがない。
「今日、一緒に帰れる?」
あまりの嬉しい提案に声も出せずにコクコクと頷いた。
三崎くんは優しく微笑んで
「終わったら昇降口にいて。ダッシュで終わらせるから。
じゃ、オレ部活行くね」
三崎くんは片手を上げて去って行った。
白いキャップに、グリーンのシャツがかっこいいな。
あぁ、この人わたしの彼氏なんだ。
まだまだ緊張するけど、話すことに少しずつでも慣れていきたい。そしてもっと三崎くんを知りたい。
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