進展

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前を歩く真紀と春樹くんはいつの間にか手を繋いでいた。 一緒にいるところはこれまで何度も見てきたけれど、手を繋いでいるのははじめて見る。 時折ふたりの顔が今にもくっつきそうなくらいに寄り添うので目のやり場に困ってしまう。 だけどそんなふたりがとても微笑ましくて、気づかない内に顔が笑っていたようだ。 「笑ってるよ?」 三崎くんが顔を覗き込んできたので、思わずぴょこんと後退りしてしまった。 ひとを見て笑ってるなんて、怪しいヤツと思われたんじゃないだろうか。 「わ、笑ってた?無意識だった。気持ち悪いよね、ごめんね」 「気持ち悪くはないけど…別に謝らないでよ」 「ご、ごめ……」 ううん、と三崎くんは首を振った。 「辛い?」 唐突だった。 何が?辛いよ。三崎くんがわたしの親友を好きなんだろうということが。 認められるのが怖くて口には出来ないけど。 「あいつら見るの、辛いんでしょ」 なんか、三崎くんがおかしなこと言ってる。 辛くはない。寧ろ幸せだ。 大好きな真紀の幸せな顔を見られるのだから。 「わたしは辛くないよ?だってふたりあんなに幸せそうじゃない。 その、辛いのは、み、三崎くんじゃないのかな…」 「俺?なんで。辛くないよ」 言っていいのかな。 3人の仲が壊れたりしないだろうか。 「だって……」 その先の言葉を言いかけて飲み込んだ。きっと誰にも伝えていないんだ。わたしが傷を抉ってはいけない。 「だって、何?」 わたしが言葉を飲み込んだことを察したのか、わたしが言いやすいように待ってくれている。 優しい瞳だ。吸い込まれそう。目を合わせてられなくて、うつむいてしまう。 「だって………         真紀のこと好きなんでしょ」 長い沈黙があった。とても長く感じただけなのかもしれない。 ソッと顔をあげると、フリーズしている三崎くんがいた。 放心状態ってこういうことだろうなと、三崎くんを見て客観的に思った。 わたしはスッキリしてしまった。ずっと胸の内にひとり秘めていたことを吐き出したから。 ズルい人間だと我ながら思う。
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