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(桜が咲きかけ…3分かな?) 大学の大きな講堂の横で、太陽は桜を見上げた。 スーツの上着の内ポケットに入っているスマホが振動した。 「はい?」 『たいちゃん、終わった!何処にいる?』 「桜の木の下。」 『いっぱいあるんですけどぉ?』 くすくすと、月子の可愛らしい笑い声が耳にくすぐったい。 「えーっと。斜め前に偉い人の銅像があります。」 『あ!分かった!髪がない人でしょ?』 「ひどい事言うなよ?そうだけどさ……。」 ちらっと見ると、確かにてっぺんがなかった。 『あ、たいちゃ〜ん!!」 スマホからの声と現実の声が両方聞こえた。 手を振り月子を見た。 懐かしい光景を思い出した。 太陽の大学の卒業式。 卒業式に参列させた月子と合流しようと探した。 桜が今より沢山咲いていて、風に遊ばれた花弁が月子の周りを泳いだ。 大人と子供の間にいる月子が、とても可愛らしくて戸惑ったのを覚えている。 考えたらあの頃からなのかもしれない。
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