3.三名の容疑者

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3.三名の容疑者

「宮崎県警の捜査二課・山添(やまぞえ)と申します。徳憲警部補、東京から遠路はるばるご苦労様でしたな」  宮崎空港のロビーで二人を出迎えた地元の案内人は、山添という名の警部だった。  警部――階級が徳憲より上だ。年齢も一回りほど上だろう。白髪が目立ち始めた不惑の男性で、目元の小じわが印象的だった。  東京よりも南に位置する宮崎県は当然、暑い。徳憲は元からクールビズだが、山添は薄手ながらも茶色い地味なスーツを着込んでおり、しかもボタンまで綺麗にとめている。見るからに汗ばみそうだったが、地元民は慣れているのか。 「警視庁捜査一課の徳憲です。今日から三日間、道案内のほどよろしくお願いします」  徳憲は腰を直角に曲げて挨拶した。  顔を上げたあとは握手も忘れない。  初対面かつ目上の相手だから、徳憲がへりくだるのは当然だ。一方、隣でのほほんと棒立ちになっている緊張感のかけらもないぐーたら干物女には内心、苛立ちを募らせた。 「忠岡さんも挨拶くらいして下さい」  小声で催促すると、忠岡はようやく不承不承と言った体裁で居住まいを正すから困る。
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