84人が本棚に入れています
本棚に追加
/65ページ
(詐欺被害者は宮崎県在住の、当時二五歳の女性……地方は人が少ないから余計に結婚が難しいんだろうな。そこへ美貌の男性が出現したら、純朴な田舎娘は一発で恋に落ちるのも無理はない……)
資料を読むと、手の込んだ詐欺を吹っかけられていたようだ。
悍田は実在する新進企業の若手社長だと偽って、宮崎県の婚活パーティに参加した。そこで出会った女性と交際を重ねて、婚約の証として結納金百万円を納めたという。
(結納金を渡したのか! それじゃ信じるのも当然だ)
まさか詐欺師が現金を献上するとは夢にも思わないだろう。
ここまでやったからこそ、悍田は詐欺師と疑われずに信用を得て、結納金を遥かに上回る財産を女性からまんまと吸い上げたのだ。
(悍田は若手社長の名を騙り、会社の運転資金やら先行投資やらが必要だとうそぶき、女性に現金を無心した……女性の家は元農家で、親が高齢により農地を売って大金に換えていたことも、狙われた一因となった)
土地を売った金が根こそぎ搾取され、詐欺師は蒸発した。
やっと詐欺だと気付いた女性の父親は、ショックの余り自殺したという――。
(父が自殺したのか。ますます恨めしいな)渋面をかたどる徳憲。(そう言えば、悍田を殺した凶器は鉈だった……鉈は農具だ。元農家の女性宅から持って来たのか?)
最初のコメントを投稿しよう!