1.初めての結婚詐欺

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(詐欺被害者は宮崎県在住の、当時二五歳の女性……地方は人が少ないから余計に結婚が難しいんだろうな。そこへ美貌の男性が出現したら、純朴な田舎娘は一発で恋に落ちるのも無理はない……)  資料を読むと、手の込んだ詐欺を吹っかけられていたようだ。  悍田は実在する新進企業の若手社長だと偽って、宮崎県の婚活パーティに参加した。そこで出会った女性と交際を重ねて、婚約の証として結納金(ゆいのうきん)百万円を納めたという。 (結納金を渡したのか! それじゃ信じるのも当然だ)  まさか詐欺師が現金を献上するとは夢にも思わないだろう。  ここまでやったからこそ、悍田は詐欺師と疑われずに信用を得て、結納金を遥かに上回る財産を女性からまんまと吸い上げたのだ。 (悍田は若手社長の名を騙り、会社の運転資金やら先行投資やらが必要だとうそぶき、女性に現金を無心した……女性の家は元農家で、親が高齢により農地を売って大金に換えていたことも、狙われた一因となった)  土地を売った金が根こそぎ搾取され、詐欺師は蒸発した。  やっと詐欺だと気付いた女性の父親は、ショックの余り自殺したという――。 (父が自殺したのか。ますます恨めしいな)渋面をかたどる徳憲。(そう言えば、悍田を殺した凶器は鉈だった……鉈は農具だ。元農家の女性宅から持って来たのか?)
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