1.初めての結婚詐欺

12/13
84人が本棚に入れています
本棚に追加
/65ページ
 詐欺師へ復讐するために。  女性の一家が現在、どこで何をしているかが重要な情報になりそうだ。 (なになに……あとから判明したことだが、実は結納金も全て偽札だったと警察の鑑定で明らかになった、だってぇ?)  偽札まで登場した。手が込み過ぎている。  それもそうか――詐欺師が本物の札束を他人に与えるわけがない。  精巧に造られた偽札は、反社会組織の関与も噂されたそうだ。なるほど、そこまで来ると単なる詐欺事件では済まなくなる。実刑を受けたのも合点が行った。 (悍田はさらに、東京に婚約者を招いて同棲まで始めている……そうか、悍田は実在する若手社長に成りすまし、東京進出を標榜して資金をだまし取ったんだ。そして実際に女性を連れて東京へ引っ越した……ここまでされたら女性は信じちゃうよなぁ)  とことんリアルに騙し抜く。  搾取した財産の儲けに比べれば、同棲など些末な出費に過ぎない。  そして数日が過ぎた頃、引き際を心得た悍田は失踪した。このとき初めて詐欺だと気付いた女性が涙ながらに被害届を提出し、捜査二課が動いたのだった。 (詐欺の証拠として、成り済ましていた若手社長との筆跡の違いや、偽札の鑑定が提出され、悍田は有罪となった……と書いてある。ん? 待てよ、筆跡鑑定を受けたのか?)
/65ページ

最初のコメントを投稿しよう!