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制服警官だった頃から、配属先でのネズミ捕りや軽犯罪の摘発などで検挙件数を着実に稼ぎ、巡査部長になって市の警察署に異動してからも、検挙記録を次々と更新した。
それが警視庁の目にとまり、本庁の捜査一課へ抜擢された次第である。
実績を重視され、捜査主任を担当することも増えた。ここでも休日返上、プライベートなど初めからなかったかのように日夜、犯罪捜査に身を捧げている。
だからこそ、彼は忠岡を危険視するのだ。
彼女の口八丁だけで一個人を犯人呼ばわりして追い詰める方法は、徳憲の堅実な捜査スタイルとはそりが合わない。
確たる証拠もなく、心証や状況証拠だけで容疑者を言い当てる破天荒な女傑に、忌避感すら抱いている。
心理学は曖昧模糊で、信用できない。プロファイリングなんてものが一時期もてはやされたが、あれも眉つばものだ。本場アメリカのFBIが得意とする手法だが、事件の印象から犯罪心理を憶測するプロファイリングは、実は大外れした事例も多い。
徳憲は現場第一主義である。現場百回で成果を挙げて来たからなおのこと、心理学という机上の空論には頼れない。
現場で実際に見聞して紡ぎ出す『捜査方針』こそが、警察に最も必要なのだ。
――とまぁ、徳憲は忠岡を胡散臭く思っているのだが。
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