3.三名の容疑者

2/15
84人が本棚に入れています
本棚に追加
/65ページ
「どーも初めまして。東京科捜研から来た忠岡って言いまーす。こんちゃーす」  こ、こんちゃーす……。  砕け過ぎである。  しかもお辞儀すらせず、手をぶんぶん振り仰ぐだけで済ませてしまった。東京では礼儀を教えていないのかと悪印象を持たれかねない。よく科捜研に受かったなと甚だ疑問だ。  屋外でもなぜか白衣を着たきりだし、その白い生地も相変わらず薄汚れている。インナーのブラウスとキュロットスカートは新調して来たようだが、荷物はショルダーバッグを肩に引っ掛けたのみ。ちゃんと着替えを用意しているのだろうか。  徳憲はキャスター付きのアタッシュケースを手で引き、これから始まる二泊三日の出張に万全の態勢で挑んでいる。忠岡とは対照的だ。 「これはこれは、ずいぶんと可愛らしいお供ですな」  山添が苦笑を浮かべた。  背が低くて童顔、態度も子供じみている忠岡は、到底社会人には見られない。徳憲は一から紹介し直さなければならず、ほとほと疲れた。  今日から三日間、宮崎県警の協力を得て懸井宅まで案内してもらう手筈になっている。二年前の詐欺事件も宮崎県警の二課に力を貸してもらったことがあるらしい。当時の捜査資料も貸してくれるとのことで、山添警部には感謝してもし足りない。
/65ページ

最初のコメントを投稿しよう!