3.三名の容疑者

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「ホテルで荷物を置いてから、懸井さんの住む延岡市へ出かけましょうかね」  山添は徳憲を丁寧に(ぐう)した。  向こうが立場は上なのに、気を遣ってくれている。まがりなりにも警察の総本山・警視庁に所属している威光が強いのだろう。そのうち打ち解けられれば良いのだが。 「懸井宅までは、結構遠いんですか?」  徳憲たちは空港を出て、覆面パトカーに乗せてもらった。  徳憲は助手席、忠岡は後部座席だ。着席した際、忠岡が「忠志くんも後ろに座りなよー。並んでくっ付きたいのにさー」などと意味不明な要望をほざいていたが、徳憲は委細聞かなかったことにしてシートベルトを締めた。 「延岡市の南端なので、車を飛ばして一時間ほどですな」  山添は平然と答えた。  宮崎空港から車で一時間、結構な距離だ。東京育ちの徳憲はそう考えてしまうが、地元民の感覚では普通なのか。山添はこう続けた。 「公共交通機関の乏しい地方では、車で一時間程度なら不便ではありませんよ」 「そうなんですか?」 「電車やバスが一時間に一本しか通らない地域がごろごろありますんで。一時間待つくらいなら車で行った方が速いでしょう」
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