4.四つの質問

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「ええ、まぁ……そうですね。うん、この人だったかな? この人だったかも……?」  ドライバーは押しに弱いのか、徳憲に根負けしたようなあやふやな肯定をよこした。  ろくに面識のない届け先なんて鮮明に記憶しているはずもない。とはいえ、歯切れの悪い返答ではあったが目撃者の証言は取れた。彼はひとまず、頷きはしたのだ。 「この老婆なんですね。ありがとうございました」  徳憲たちは礼を言って引き上げた。  山添の駆る覆面パトカーで宮崎県警に帰還する。交通渋滞もなく快適に走行できたのが何とも皮肉っぽい。運転する間、三人の顔はちっとも浮かなかったのに。 「母・悧恵さんは荷物の受け取りで家に居た……アリバイが証明されてしまいましたな」  山添が、しかつべらしく青色吐息する。 「娘の恷恵さんは宮崎市内で遊んでいて()()ですしね」  助手席の徳憲も苦虫を噛み潰すように、悧恵の写った写真を指で弾いた。  怨恨による犯行ではない、ということだろうか。  大至急、他の『ストーリー』を新たに考え直す必要がありそうだった。 「んー……」  そんな中、後部座席に居た忠岡の唸り声が徳憲の気を散らした。 「何ですか忠岡さん? 俺の真後ろでわざとらしく呻かないでもらえます?」
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