箱庭のあなたへ

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セージとは、王室剣術学校時代に知り合った。というより、彼は私の後輩である。本来、3つも年が違えばそんなに交流はないはずだが、自主練習でたまたま居合わせることが多く、気づけば顔見知りとなっていた。 女からアドバイスをもらうなんて、とつまらぬプライドを掲げる輩も多い中、セージはとても謙虚で柔軟で、よく「先輩、手合わせお願いします」と挑みに来ては、直したほうがよいところなどを聞きたがった。 そんなふうに懐かれて、私も悪い気はしない。自分もそこまで実力がある方ではないと思いつつ、年長者として経験からアドバイスできることはなんでも伝えてやった。時には、言いすぎたか、と思うようなこともあったが、その度にセージは 「やっぱり、先輩は頼りになります。ありがとうございます」 と言って笑ってくれるので、安堵すると同時に、この素直さや謙虚さを自分も見習おう、と思うのだった。 いつでもひたむきで前向きなセージと過ごす時間は、とても心地よく、気づけば、セージとの自主練習を楽しみにしている自分がいた。そんな感情は生まれてはじめてで、驚きはしたが、決して嫌ではなかった。むしろ、このあたたかく甘いぬるま湯に、浸かっていられるものならいつまでも浸かっていたい。そう思うほどだった。
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