箱庭のあなたへ

7/12

1人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
「先輩がいなくなったら、俺の楽しみはどうなるんですか」 むすっと拗ねたような声音は、必死の強がり。ここで泣いたって仕方ない、君はそれをわかっている。悲しめないなら、理不尽さに憤るしかない。それを知っている。 「君の楽しみって、なんだ」 「わかっているくせに。先輩が休日に剣術学校へ来てくれて、それで先輩と話をすることです」 「ああ」 それは残念だけれど、誰か他の話し相手を見つけてくれ。言うとセージは、長い睫を伏せた。 君は、まだ甘い。本当の戦場へ死にに行くことが、どういうことか、そして死ねば人はもう還らないのだということが、どういうことか、頭ではわかっていても、感情はそれを知らない。 行かないで、と言えば、きっと私が行かなくてすむのだと思っている。またこうした日々が続くのだと信じている。 そんなことは言わないだけなのだと、思っている。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加