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「先輩がいなくなったら、俺の楽しみはどうなるんですか」
むすっと拗ねたような声音は、必死の強がり。ここで泣いたって仕方ない、君はそれをわかっている。悲しめないなら、理不尽さに憤るしかない。それを知っている。
「君の楽しみって、なんだ」
「わかっているくせに。先輩が休日に剣術学校へ来てくれて、それで先輩と話をすることです」
「ああ」
それは残念だけれど、誰か他の話し相手を見つけてくれ。言うとセージは、長い睫を伏せた。
君は、まだ甘い。本当の戦場へ死にに行くことが、どういうことか、そして死ねば人はもう還らないのだということが、どういうことか、頭ではわかっていても、感情はそれを知らない。
行かないで、と言えば、きっと私が行かなくてすむのだと思っている。またこうした日々が続くのだと信じている。
そんなことは言わないだけなのだと、思っている。
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