水野の父の目的

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 まったく、二人に、脈がなければ、いかに、米倉と水野がオーナーを務める会社が合併しようと、双方の子供たちを結婚させようとは、思わないに違いない…  別の言い方をすれば、ずばり脈はあると、判断したということだ。  「…たしかに、透(とおる)と、好子ちゃんは、お世辞にも仲が良いとはいえなかった…しかし、仲が良くないというのは、別の見方をすれば、互いが意識している証拠…心底、お互いが、毛嫌いしていれば、顔を見るのも嫌なはずです…そして、なにより、今回、好子ちゃんが、透(とおる)に相談を持ち掛けたことで、二人の間が、昔より縮まってる…そう思った…正造君が、二人の密会を、不倫と偽って、世間に流したことで、米倉と水野の合併のイメージダウンになる…だから、急いで、二人の婚約報道を流した…正造君のウソを逆手に取ったんです…」  水野の父親が、熱く語った。  私はそれを訊きながら、失礼ながら、それは、水野の父親と米倉平造の思い過ごしでは? と、考えた。
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