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鹿女亜希(しかめ あき)はこの世が終わるかと思うぐらいの絶望の表情をしながら林河区の歓楽街を歩いていた。その格好は高級ブランドスーツに身を包み、原型が無くなる程の化粧で顔を隠していた。何故にこの様な格好をしていたかと言うと、婚活パーティーの帰りだからである。婚活パーティーに参加はするものの彼女には一切人が寄り付かないのであった。
担当者に相談しても「次こそはうまくいきますよ」と言ったありがちの慰めの言葉しかかけられない。彼女が婚活パーティーに参加した回数はもうゆうに30回を超えていた。これだけ参加していれば、初めに書くプロフィール、エントリーカードの書き方ももうお手の物。書き方が分からなくて困惑している自分と同じ婚活パーティーに参加した女性に書き方を教えた回数はもう数え切れない。そんな女性達は満面の笑みで言う「ありがとう」と。そしてそんな女性が最後のカップル成立でアッサリイケメン男性を持って帰ってしまうのだ。「婚活パーティー初めてなんです~」って媚びるような口調で宣ってた女に手順を教えたら狙ってた男をアッサリ持っていった事を彼女は根に持ち続けた、名前も知らないあの女に対する恨みを忘れる事は一生無いだろう。
「何でうまくいかないのよ!」
鹿女亜希はいつの間にか路地裏を歩いていた。そこにあった自販機でエナジードリンクを購入し、即座に一気に呷った。体の疲れは満たされたような気がしたが心の疲れが満たされる事は無かった。
彼女の人生は男というものとは縁遠い人生であった。小学校では男子と一度も話す事は無く、中学校でも同じく男子とはフォークダンスの時に一度触れたぐらいで何もなく、高校生に至っては友達すら出来ずに机に突っ伏して寝たフリをするだけの3年間であった。大学に入り少しはチャンスがあるかと思ったが小中校の12年間で全くチャンスが無かった人間にチャンスが作れるはずは無い。社会人になった後も男に縁遠い事は変わり無かった。就職活動を頑張ったおかげか上場企業のOLになることは出来たが、そこにいる男達に相手にされる事は無かった。
結果、34歳の今になるまで男と言うものを渇望はしているが全くと言っていい程に縁が無い人生が現在進行系で続いている。
「あ、化粧落ちてきた」
鹿目亜希はポシェットから鏡を出した。そこに映し出された顔は醜女と言う他無かった。この顔のせいで彼女はこれまでずっと男に相手にされなかったのである。小学校の時には男子からは不細工な豚とあだ名されていた。女子からは「あいつよりマシ」みたいな感じで優しくはしてもらえていた。中学校の時もそれは変わらず、フォークダンスの時も男子は皆触りたく無いのかパントマイムが如く触らないように手を浮かべていた。つい触れてしまった男子はフォークダンス終了後にアルコール消毒をしたと言う。高校生になって人間関係をリセットするつもりで自分が住む区とは別の高校に進学はしたが顔はリセット出来ない。それ故に小中と余り変わらなかった。大学に入ってからはどうしても彼氏を作りたいと思い合同コンパ(合コン)に積極的に参加はしてきたが、盛り上げ役に徹する事しか出来なかった。参加してた男性は「あの人、面白いんだけど如何せん顔がね……」と口々に言う始末。大学生活の四年間で星の数程の合コンに参加はしてきたが一回たりとも男性と一緒になることは無かった。社会人になってからも上場企業のOLと言う立場を生かして合コンに何回も参加はしているが結果は変わる事は無かった。
実家の親からは「さっさと結婚しなさい」と矢の催促があるがこんな顔に生んでおいて何を言っているんだと言う文句しか出てこない。
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