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 路地裏を抜けると、そこは風俗街であった。ホスト、キャバクラ、風俗、風俗紹介所、大人の玩具屋、ありとあらゆる性産業の店舗がそこにあった。昼間だと言うのにカップルが妙に多く、ホストクラブに同伴で歩く全身ブランドと宝石に身を包んだ有閑マダム、明らかに不倫の密会と思われる中年カップル、最近では同性愛に関しても寛容になっているのか男同士で手を繋ぐカップルや女同士で手を繋ぐカップルもいた。 「全く、どいつもこいつもイチャイチャしちゃって」 鹿目亜希はこう吐き捨てながら風俗街を歩く。見渡す限りにいるのはカップルばかりで、こんなところにいる自分が虚しくなっていた。 「あー! 男でも降ってこないかしら! 凄くイケメンの!」 彼女の魂からの叫びであった。いつも騒がしい風俗街であるせいかこの声を聞くものは誰もいない。しかし、彼女は幻聴を聞いた。「この願い、叶えてしんぜよう」と。 ドサッ 鈍い音が風俗街に響いた。そう、彼女の願い通りに凄くイケメンの男が天から降ってきた。しかし、その凄くイケメンの男は息絶えていた。仰向けで倒れているその男の見開いた瞳孔には鹿目亜希の汗で化粧が崩れ、死体を見て恐れ慄く顔があった。
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