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 二人はホストクラブ、ビートMに向かって歩いていた。ビートMに勤めるホスト仲間に被害者、福部祐介の事を聞くためだった。 「そう言えば高校でクラス同じだったんだろ? どんなやつだったんだ? いくら話した事がなくてもどんな奴だったかぐらいは分かるんじゃないのか?」 「そうですねぇ、一言で言うならチャラい?」 「高校の時からこんな感じだったのか」 「いわゆるイケメングループってやつでした、自分みたいなオタクグループとは住む世界が違うみたいな」 「あれ? オタクグループだったの?」 「ゲームやアニメの話ばっかりしてましたよ」 「妙に前の事件の時に参道の奴と親しかったわけだ」 「参道くん達とも話しはしていたけどマニアック過ぎて…… あいつらセリフを一言一句覚えていたり、作画監督で良し悪し判断したり、声優の演技について語ってたりで……」 「ガチヲタとヌルヲタの違いってやつか」 「まぁそんな感じです」 「今回は猛山くんから情報は得られないってことか」 「そういうことです、あ、でも……」 「なんだよ」 「イケメンだったってだけで女子とは仲良かったですね」 「女子?」 「クラスの女子のよっぽどのブス以外は食べられてるんじゃないですかね」 「羨ましい、いや、けしからん話だな」 「クラスの女子は多分大体が竿姉妹かと」 「うわ、生々しい話だな」 「世の中顔ってことですよ。あ、ここですよ」 現場から歩いて数分のところにホストクラブ、ビートMはあった。無駄に豪華な装飾の木製の扉の上には所属ホストの写真がずらりと並べられていた。一番大きな写真は福部祐介がドヤ顔の右斜め45度で映されているものであった。 「福部くん、ナンバーワンホストだったみたいですね」 「ああ、一番上の一番デカイ写真になってるな。34歳でナンバーワンホストって凄いのか?」 「テレビで見たホスト番組の知識なんですけど、ホストのピークは大体25歳ぐらいらしいんですよ。それを過ぎると後は引退まで進むだけらしいです」 「34歳で店長まで勤めてナンバーワンか、太客でも付いていたのか余程多くの女性たちに好かれていたのか……」 太客。水商売などで多額の金を使う客を呼ぶ言葉。太っ腹な客の略称。一度の来店で使う額が多くても太客認定はされず、一ヶ月で使う額で太客かそうでないかの認定がされることが多い。 猛山洋児はドヤ顔の福部祐介の写真の下にある扉をゆっくりと開けた。 そこには薄暗いながらも西洋ルネッサンス期の宮殿を思わせるきらびやかな空間が広がっていた。まだ時間も早いせいか出勤しているホストはまばらであった。スツールに座っているホストは営業電話をかけるサラリーマンのようにペコペコと頭を下げていた。
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