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(悪夢2)
その毒は、紫で刺々しい形をしていた。どうしてそれを出されるままに飲み込んでしまったのかはわからない。どうしてそれが毒だと思ったのかと言うと、酒場のマスターに「それは毒だよ」と言われたからだ。
それを聞いたあと、怖くなって、不安で仕方がない。飲み込んだ喉が熱くなる。胃のあたりが痒くなる。
「痛い!痒い!たすけて!」
ああ、毒なんか飲まなきゃよかった。吐き出さないといけないと思って、身をかがませた。喉に指を突っ込んだ。吐き出せない。
「うえぇっ!おえぇぇ」
洗面所で鏡を見る。顔に紫色の斑点ができていた。
どうしよう、わたし、死んじゃうの?
女の子はうずくまり、顔を隠して泣いた。
バクは、その長いピンクの鼻で、ちょん、と腹をつついてやった。そうすると毒の塊はアメジストの宝石となった。その夢の続きはどうなったのかというと、
「あーっまた忘れ物をした。今日で3日も連続で忘れ物!どうしよう、先生に怒られちゃう。」
そこで目が覚めた。女の子は焦って、かばんの中を確かめて、昨日やった宿題を入れた。おかげでその日は忘れ物をしないで済んだ。
夢には二種類ある。一人で見る夢と、二人で見る夢だ、僕とバクが介入すれば、それは二人で見る夢になる。僕らは夢を見る人のことを宿主と呼んでいる。他人の夢はひとときの仮宿だから。夜、空を見上げると、大きい星も小さい星も、みんな等しく瞬いているだろう。それは、バク飼いが星空を飛ぶときに君と星の間を駆けることがあるからだ。
でももし、夜に瞬かない星をみつけたなら、それは、一匹のバクが君を狙っているのだ。だから、もしその晩に悪夢を見たとしたら、バクの夢と交換してもらえるから心配はいらない。ぜひ創造的な、ファンタジックな夢をみてほしい。でないとバク飼いが星空へ帰れないから。そうなってしまったら、君はもう一回寝ないといけない。一度目が覚めたのに、もう一度眠くなってしまうのは、バク飼いが子どもを寝かせているからなのだ。
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