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三
その時――
「玉。玉ではないの?」
鈴を振るような声が聞こえて、
(この姿でも、気付いてもらえた!)
感動と、再会の喜びに目を輝かしかけた珠玉は、はっと胸を衝かれた。
「ひ、姫様――!」
身分違いは重々承知ながら、この心細い状況で嫦娥の顔を見たならば、胸にすがって泣き出してしまうかもしれないと思っていたのだけれど、それは叶わなかった。
嫦娥は、幸いにも美しい嫦娥の姿を保っていたが、とてもとても小さかったのだ。おまけに、背には虫のような羽がある。
なんてこと。
大方じじいのことだから、嫦娥の娥と、虫の蛾を懸けているのだろう。
思えば珠玉も、兎が香箱を作って丸まっている様を、玉と見立てたものかも知れない。
まったく、これだからじじいは嫌いなんだ。
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