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汗のにおいが立ち込める室内。
じめっとした湿気の多い薄暗い部室。
オスの匂いも加わって、吐き気が増す。
「はあ、はあ、はあ……ん、くっ」
「あ……あっ、せんせえ……すごっ……奥まできて、る。くるっ、しい」
「やめるか?」
「やっ……やめないでぇ。もっと奥まで突いて。ぼくをぐちゃぐちゃにして……お願い」
明夏の中に熱杭を入れて後ろから突いてくる男は、この高校の体育教師・東雲冬夜だ。
剣道の道場の奥にある部室で、六時間目の授業をさぼって二人は折り重なった。部室のテーブルに手をついて明夏は尻を突き出し、東雲が突っ込んでいる。
明夏が悔しくなるくらい男臭く……オスの身体をしている。太くて大きい熱が、明夏の弱いところばかりを攻め立ててくる。東雲が入れてから、何度頂点を味わったか。
(ああっ……また、きたっ……)
身体の芯から震えが湧き起こる。
「また……イキそうだな」
「やっ、今度は先生も一緒に」
「一緒に……なに?」
「イッて。ぼくと一緒に」
「……一緒にイキたいのか?」
「お願い……ぼく、先生が好きだから」
「わかった」
さらに律動が早くなる。イキたくて敏感になっている中が、東雲の動きに敏感に反応した。
(やだ……やだ、これ。ああ、気持ち良すぎるから……)
「ん、ん、んぅ……ああっ、や……い、くっ……ああああっ!」
「……ん、くぅ」
東雲の動きが一度止まってから、律動がゆっくりになる。明夏は白い熱を吐き出しながら、中の収縮がキツクなる。今までで一番長い絶頂だった。痙攣がなかなか収まらず、呼吸も荒くなった。
(ああ、どうしよ。止まらないなんて)
がくっと膝から力が抜けると、ガタッと音を立てながら明夏は床に座り込んだ。スルッと東雲の男根が抜けて、後ろの口がもの寂しげにヒクつきながら、中に出されて精液が出てきた。
「満足したようだな。今日は部活がある。綺麗にしてから出て行け。それと終礼もきちんと出ろよ」
テーブルに脱ぎ捨てあったジャージの上着を羽織りながら、明夏に振り返ることもなく、部室を出ていった。さっきまであった背後の温もりは消え、冷たい風が吹いた。
(ぼくだけ何度もイッて……あいつは一回だけ? そんなはずは……)
予想外の情事の結果に、明夏は下唇を噛みしめた。右手の親指を口にあてると、爪の際にある肉を歯で少しだけ引きちぎった。
違う。こんな予定ではなかったのに。明夏の中の気持ち良さに、東雲がイキまくって、溺れる予定だった。もっと……と欲しがって、これ以上やりたいなら『金』を要求する計画だった。
(おかしい。ぼくに溺れて、好きになりすぎて……あっちから求めてきて……)
「あの……桜翔高校の東雲先生ですよね? 会いたかったんです、ずっと……。恰好いいなあって思ってて。一目惚れしちゃって、好き、なんです。付き合ってください」
「……?」
「あ、あの……東雲先生?」
「西森、女の恰好をせずとも好きなら、普通に告白してくればいいだろ?」「え?」
(バレ……てる。なんで?)
中学から仲良くしている友人から、女子高の制服を借りて女装をしていた。オヤジたちを引っかけるのには、この格好がウケるから。女だと信じて、エロい顔をして、足を触って……お小遣いをくれる。チョロい。
小遣いをもらうのが目的じゃない。完全に女だと勘違いして、男が欲に駆られて触ってくるのが面白い。その駄賃として金はもらう。
そんなお遊びに飽きてきて、友人の千夏と知夏で新たな遊びを見つけようとしていた。それが今、やっていることだ。
女装して、お堅い先生を誘惑する。東雲冬夜は校内では、固すぎて真面目すぎる教師として有名だ。保険医の柊木雪と婚約をしており、来年には式をあげるとかっていう噂もある。
婚約者がいる男が、純粋な目で告白をし続ける女子高生にどれだけ耐えられて、落ちていくか……それを見て楽しもうとしていた、のだが。
あっさり明夏だとバレてしまった。おかしい……一度も、バレたことないのに。クラスメートに悪戯で、告白したときもバレなかった。男子校で、女子との接点がないからそいつの浮かれ具合がキモくて、すぐに音信不通にしてやったが。
「先生……なんで」
「わかるだろ。好きなら改めて素の姿で告白しに来い。明日の六時間目なら担当授業がない。剣道部の部室にいるから」
(ぼくが行くわけないだろ)
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