7人が本棚に入れています
本棚に追加
/41ページ
第二章
次の日。文芸部部室にて僕が書類を手渡すと、恵はとても嬉しそうな表情を浮かべていた。
「ありがとう! あなたがそう言ってくれて、私はとても嬉しいわ。……ところで、今回の入部は、飯塚真凜先生も何か言っていたかしら?」
「……何も言っていないと言ったら、嘘になるけれど」
僕は、全てを打ち明けた。
母さんから、蛙の子は蛙なのかな、と言われたということを。
「それって、褒められたってことじゃないの? 私にとっては、もしそれを受けることがあったら感涙ものだけれど」
「そりゃ、ファンはそう言われたら嬉しいかもしれないけれど……、僕と母さんの関係はあくまでも『親子』だ。そんな関係である以上、母さんからの言葉を無碍にする訳にもいかないし、放置する訳にもいかないし、烏滸がましいと思う訳にもいかないし、かといって、どうするべきかって悩むのが当然の問題なんじゃないか? 例えば、君は魔女だけれど……」
「魔女だって、ただの人間よ。そりゃ、異世界生命体ということで言ってしまうのなら、私達魔女は異世界からやって来た、この世界特有の人間ではないということになるのだろうけれど」
難しいことを言っているように見えるが、僕はそれを放置する。
「とにかく、僕はこれを君に提出する。これで僕は晴れて文芸部の部員という訳だ。そうだろう?」
「ええ。そうなるわね。あなたは副部長の座に任命してあげるわ! 私に何かあったら、あなたが責任もって行動するのよ?」
「何だよ、それ。まるでいつかのタイミングで何処かに消えてしまうような言い方じゃ……」
「可能性は、ゼロじゃないわ」
彼女は、はっきりと言い放った。
部室に、静寂が染み渡る。
そして、その静寂を切り裂いたのは、彼女自身の言葉だった。
最初のコメントを投稿しよう!