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第一章
「……ねえねえ、あなたのお母さんって飯塚真凜先生なのよね?」
「そうだって、さっきも言ったじゃないか。……それとも、何かご不満な点でも?」
「全然! だって、あなたのような人がやって来るなんて思いもしなかったから!」
という訳で、昼食。
この高校は学食のスタイルを取っていて、要するに僕達は学食に出向くことになっていた。日替わり定食四百円に始まり、ラーメン三百円、チャーハン二百円、Aランチ五百円、Bランチ五百円。何というか普通の高校に比べると少しリッチなような? ……まあ、そんなことはあまり気にしていないのだけれど。
「ねえねえ、色々と話を聞きたいのだけれど、やっぱり、作家って原稿用紙に包まれているイメージなの?」
「それってどれくらい昔の話だよ……。今はPCで仕事してるよ。プリンターで印刷して、赤ペンで手直ししてる。それって、特段珍しい話じゃないように見えるけれど?」
「ああ、そうね。そうだったわね!」
今日の日替わり定食はメンチカツ。付け合わせのサラダに味噌汁、それにライス(大盛りは無料だ)がついて四百円というのは学生の懐事情にも有難いように思える。
僕は日替わり定食をすかさず注文した。母さんから貰ったお小遣いは五百円。百円は余る計算だ。……百円じゃジュースも買えやしない。今度抗議して六百円に上げて貰おう。
「私はAランチ。今日はハンバーグ♪」
「……贅沢だなあ」
「え? 何が? どうして?」
「……そこで共感出来ない価値観が既に僕と君の間で問題になってるんだよ」
でもまあ、それ以上は言わないでおこう。
女性にきつく当たるのは、僕のポリシーに反する。ポリシーなんてあるのか、って話になってしまうけれど。
彼女がAランチ、僕が日替わり定食を注文すると、厨房に居るひげ面のオジサンが調理を始める。その間にカウンター側に居る女性がよっせよっせとした様子でご飯をよそり始める。
「ご飯、大盛りで良い?」
「いや、普通で良いです」
「何だい、ちゃんとご飯は食べないと駄目だよ。それじゃ、これぐらいにしておくからね」
そう言われて提示された量は、明らかに普通よりも少し多い量だった。
だから、普通だと言っているのに……。
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