7人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
BAD POLICE
家に帰るやいなや、バックの中から彼等のプロフィールを探した。
BAD POLICE……。(何てバンド名だ。ふざけてんのか?!)
メンバー3人
コアラ:ドラムス 23才
ジュン:ベース、ボーカル、バンマス 23才
ギタ:ギター 23才
(本名が、ねぇ〜!)
コメント欄
BAD COMPANYとPOLICEをこよなく愛する3人です。
ダンス系、ヒップ系はぶっ飛ばし、情熱と爆音と勢いで時代を切り拓く。
それがBAD POLICE。
もう時代が求めはじめた……!
連絡先 050-****-****
(BAD COMPANYとか、僕もよく知らないしなあ、でもまぁPOLICEはよく聴いてたけど。)
それにしてもボーカルが気になるなぁ。生で聴いてみたいなぁ〜。
演奏も爆音でまとまり無いけどシンプルで良いし、何よりボーカルが良い。
でも、何かが足り無い気もするし。録音状態も良くないし…。
弦楽器……、アンサンブル、打楽器…。
ん〜スタジオに、呼んでみるか。
あ~、そうだ!!
何かひらめいて、そうだ!そうだよ!と思いながら、その夜は寝落ちした。
朝、8時30分。
いつもなら、もう少し遅く迄寝ているのだが、目が覚めてしまった。
どうやら、彼等の事が気になり始めている。デモ曲を聞いてみる。
BAD POLICE。
お湯を沸かしながらコーヒー豆をゆっくりと挽いた。
信一は、この時ほのかに薫る香りと、豆が潰れていく手の感触が好きなのだ。
コーヒーを二口飲むと、おもむろに携帯電話を開いて、番号を入力し始めた。
信一「えーっと、050-****-****って、誰の電話番号? 書いてないけど、多分バンマス、ジュンかな?」
そう思いながらプロフィールにある番号にかけた。
呼び出しているが、中々出ない。
諦めて、切ろうとした時に、かすかな声が聞こえて来た。
慌てて携帯電話を、耳元に戻した。
信一「もしもし。」
相手「・・・。」
信一「もしもし!? あれっ?」
相手「は〜ぃ、どなた?」
信一「あ、寝てたのかな?突然で申し訳ないけど、わたしMU音楽事務所の御手洗と言います。」
相手「・・・事務所を・・・見たらいい?
何ですかそれって。」
信一「イヤイヤ!、MU音楽事務所の御手洗と言いますっす。君は誰でしょうか? あなた方のデモ曲聞きました。」
相手「え! MU音楽事務所の方ですか?
・・・すみませんが、キャンドゥ音楽さんでは?」
信一「いえ!キャンドゥでは無く、MUですが!」
ムッっとなった。このキャンドゥ音楽事務所は、あのハグソウルと契約し、しかもあの野口和夫がいる音楽事務所だ。
信一「あ〜ぁ!出し間違えた?って事ですか!では残念ですが、破棄しときますっす!!」
相手「いえいえいえいえ!そうではないんです!
すみません。違います!手違いです!」
結局、こう言う事だった。
本命の事務所はMUだったが、その前に評価を得る為に、キャンドゥに送り、再度曲を整えてMUに送る予定だった、しかしメンバーが勘違いしていきなりMU事務所に出してしまったんじゃないか!と。
信一「じゃあ、うちに出す予定だったのは間違い無い。そういう事で良いのかな?」
相手「ハイ!その通りで間違いありません。」
信一「ちなみに、君はジュン君で間違い無いの?バンマスの?」
ジュン「ハイ!その通りで間違いありません。」
信一「分かりました。じゃあ、一度うちのスタジオで演ってみない?
出来れば早いほうが良いんだけど、どうだろうか?」
ジュン「え!MUさんのスタジオで演奏出来るんですか?!
願ってもない事です!直ぐにメンバーと打合せて連絡します。」
信一「出来れば2日後の午後に来てくれると有難い。」
ジュン「分かりました。それですみませんが、先程は寝ぼけていて、お名前を聞きそびれてしまったようで。」
信一「うん、見たらいい。じゃ無く、み・た・ら・いです。プロデューサーやってます。電話番号は見えてると思うので。じゃ宜しく。」
ジュン「うぅ………宜しくお願いします。」蚊の泣くような声だった。
その日会社には、午前10時半を過ぎた頃に着いた。
事務所のデスクには、10個程の包みが置いてあった。
PCを立ち上げて確認すると、20件程の応募があった。
応募締切は、明日が最終日である。
応募小包を丁寧に解いていると、
携帯電話が鳴った。ジュンからだ。
慌ててメンバーに知らせて確認したのだろう、2日後の14時に行けるとの事だった。
ジュンには、事務所の場所の確認と、受付で自分との面会を分かるようにしておくと伝えた。
信一は、久し振りに胸のトキメキを感じた。
ひょっとしたらあれ以来かもしれない!
5年前韓国で、ハグソウルとの3日間。忘れていた感情だ。
しかし、悠長に過す暇はない。
信一は明日の締切り迄は、全ての応募を整理しておきたかった。
明後日には、彼等のライブ演奏が聞けると思うと、仕事もはかどった。
昨夜浮かんだアイデアが何だったのか、頭の片隅で火種の様にくすぶってはいたものの思い出せずにいた。
最初のコメントを投稿しよう!