素顔のトモ君が超イケメンだった件について

1/1
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
「えっと、どちら様?」  シャワーを浴びて出てきたら、そこにいたのは、超イケメンだった。  奥手なトモ君に合わせて、キスも付き合ってから1ヶ月。  そして2ヶ月後の今日、いよいよレクチャーしてあげようと、ホテルに誘われるように諮った。  酔ったふりをして、体を密着させ、ちょっと休憩したいと囁く。付き合ってから色々教えてあげたから、その意味はわかってるはずだ。  黒髪もさ男の黒縁メガネのトモ君だったとしても。  思惑通り、近くのラブホテルにトモ君は私を連れて行く。  シャワーを先に浴びるねと、気分が悪いはずの私が言うものなんだけど、そう言って、シャワールームに入った。だってベトベトしているのは好きじゃないし、いい香りを漂わせたほうがいいでしょ?  十分に体を洗い、しっかりとメイクした後、出てきたらそこにいたのはトモ君じゃなくて、超イケメンだった。 「いやあ、笑えるわ。シャワー浴びてもばっちりメイク。すっぴんも見せれないくらいブスなの?」 「は?」 「いや、あいつが女を教えてくれた女神とか言っていたけど、普通じゃん。いや普通以下?」 「え、は?」  なんか意味わからないけど、けなされている?私、普通以下とかひどい! 「傷ついた?お前だって、ひどいだろ。俺が童貞のオタクだと思ってさ、バカにした態度で。あいつは女神とか言っていたけど、ありえねー」 「えっと、失礼ですけど、あなた誰?さっきから失礼なことばかり!」 「わかんないの。俺、トモ君だよ」 「えええええ??」  は?こんなイケメンがあのトモ君と一緒なの。  っていうか顔もだけど、雰囲気も全く違うし、トモ君はこんな口悪くない!声が一緒だけど。 「あのさ、俺、眼鏡してメイクしてたの。落としてさっぱりだよ。ああ、2ヶ月間辛かったわ。今日で終わろうぜ」 「え、なに?」 「この2ヶ月、あんたの女神っぷりを見ていたけど、全然わからんかった。だからさあ、素顔をさらすことにしたの。好きでもない女とやるのも嫌だし」    トモ君だったイケメンはバスタオル姿の私に背を向けると、さっさと部屋を出て行ってしまった。  お金も払ったし(私持ちだった!)  だから、もったいないから一人でラブホで夜を過ごすことにした。 「うけるわ!」  なんか眠れなくて友達の麗子にその話をしたら爆笑されたけど、その後にまあ、当然の報いと言われた。   「いやなんで?」 「だって、あんたの態度なんかひどかったわよ。彼氏を見下すってどうなのよ。まあ、確かにもてない男とばっかり付き合っていたけど、なんか付き合ってあげてるって感じで見ていて最低だったし。まあ、トモ君よくやったって感じ?」 「なによ。それ!私達、友達でしょ」 「友達よ。だから言ってあげてるの。これに懲りて変な理由で彼氏を作るのをやめなさいよ。相手に失礼よ」  麗子はそれだけ言ってスマホを切ってしまう。  私は悔しくて、スマホをベッドに放り出して、何か飲もうかと禁断の冷蔵庫を開けた。ワンカップのお酒が入っていて、私は強くもないのに、それを全部飲んでしまった。そしたら気持ち悪くなって、トイレに走り、気がつくと意識を失っていた。  次に目を開けると超イケメンが視界に入ってきて、思わず体を起こす。すると馬鹿なことに彼の顎が私の頭にあたり、私たちはお互いぶつけた箇所をかばって、唸る。 「な、なんで急に起きるんだよ。馬鹿やろう!」 「って、っていうか、なんであんたがここにいるのよ!」 「忘れ物して戻ったらトイレで気を失っていたから、ベッドに運んだだけだ。感謝しろよ!」 「あ、ありがとう」    口は悪いが、このイケメンはトモ君の優しさを少し持っていた。  本当あの優しいトモ君がこいつを一緒なんて思えない。  こんな顔だけの男!  昔からイケメンは嫌いだった。だって、性格悪そうだし。なんか軽そうだし。だから、かっこ悪いけど優しい人を選んでつきあってきた。麗子はああいったけど、私ってそんな見下した態度してたのかな。 「なんだよ?」    少し気になって、この性悪イケメンに確かめることにした。 「あのさ、私って、あんたを見下していた?」 「ああ。付き合ってあげてる、感謝しなさいって最悪だったな。従兄弟がお前と付き合っていたことが信じられない。なにが女神だ」  本当だったんだ。  そんな風な態度、意識したことなかったのに。  っていうか、その従兄弟って誰? 「あの、従兄弟って誰?」 「雅夫だよ。マサ君」 「マサ君?ああ!」  一条雅夫くん、マサ君。  なぜか私と付き合っていくうちに、かっこよくなっていった人。そのうち、なんかかっこよすぎて別れてしまった。  イケメンは怖い。なんか緊張するし。  泣きながら別れないでって言われたけど、その泣き顔もかっこよくて、これはダメだと思った。  えっと、そのマサ君が私のことを女神だって?  なんで? 「腑に落ちない顔をしてるな。俺もそう。だけど、ちょっとわかった気がしてきた。悔しいけど。すっぴんのほうが可愛いのな」 「は?え?」  性悪イケメンはそう言いながら、私の頬に触れる。  いや、なに?  こいつ、私のこと嫌いっていってなかったっけ? 「うーん。本当に女神なのか、確かめたくなった。いい?」 「は?」 「だって、その気だっただろう。俺も今はそういう気分だから」 「お断わりします。誰があんたなんかと」 「なんで、俺こんなにイケメンなのに?」 「ああ!触るな!」  イケメンは嫌い。  私が好きなのは優しいブスメンだ!    部屋から性悪イケメンを追い出し、内から鍵をかける。  そうして私はどうにかイケメンを追い出したのだけど、数週間後付き合うことになった。  イケメンが嫌いと言い続け、彼はトモ君に戻ってくれた。  だからこそ付き合うことができている。     イケメンは怖い。  これは私の変わらぬ主張だ。          
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!