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「さあ梓、今回はどうする?」
レイルの問いに梓は無言で指先を動かすと、セドリックはそのままその巨体を前かがみに低くし、左手を地面について、右手を振り上げる。
「……失敗したら銃撃おねがいします。……ただし、これなら失敗はしづらいです」
「おっと。でも了解ね、梓」
梓の呟きに姫乃が洋々と反応した。レイルも姫乃も次弾装填を終えているので、もし何かあれば援護射撃ができる状態であった。
「喜利子さん、パンチが来る!アクセル踏むしかないっしょ!!」
「ひょ!?速度が上がらないし、警告灯が!?」
車内はパニックだった。あまりにソニアにスカイラインにボコボコにされたDAF44には幾つものダメージが蓄積されていた。そしてこの場に及んで一気に出たのだ。冷却系、油圧系、コスモスからのパワー供給系とメーター内は赤色や黄色に灯る警告灯たちによって一気にこの車の生命の危機を告げる満艦飾と化した。
セドリックは自身に目掛けて突っ込んでくるDAF44へ右手を振り下ろすのではなかった。そのまま勢いよく地面を這うように拳を振り抜いた。
そのまま拳はDAF44の左前方に衝撃を浴びせた。
「命中!」
姫乃は思わずガッツポーズする。
激しく地面を転げまわりながらバンパーやミラー、更にはラジオアンテナ等をぶちまけて土手方向へスクラップになりながら転がるDAF44。
その後、完全に原形をとどめていないDAF44は土手の坂に負けて漸く止まった。
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