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「よし、捕らえるぞ!」
ソニアが土手のてっぺんから下ろうとした時だ。五つの巨大火災旋風がこちら目掛けてやってきた。桃花と杏花が生み出したモノだ。
「うわ!あの火災旋風、どこに行くのよ!?」
「ソニア、あの方向はDAF44よね?」
「んなことは分かってるよ、千椛!如何するのさ!?」
「それよりも見てみなよ、あの二人、脱出する気だよ」
DAF44の割れたフロントガラスの枠組みからチヤ子、運転席ドア跡地から喜利子が脱出し始めた。全身ただでさえ見窄らしいのに更に痛々しい姿で。
「あ、待てよ」
ソニアはある事に気づいた。そう、DAF44の中には爆弾がある。かりに一発だけなら被害は少ないだろう。だがもし何発もあるならば。彼女は急いで
「桃花、杏花、よく聞きなさい!」
無線で二人を呼び出すと
『はーい』
出たのは杏花だ。
「良い、車に絶対その火災の竜巻を当てないで!ここ一帯に大きなクレーターが開くから。やるならあの今脱出した二人を狙いなさい」
『二人~?』
今度は桃花がでた。するとソニアから千椛は「貸して」と言って無線を受け取ると
「桃花、私は言う方向にお風ちゃんと一緒に風のエストを使って誘導して」
『はーい先輩』
桃花の気の抜け気の抜けた返事が返ってきた。
「その生返事、如何にかしなさい」
と桃花に小さく罵ると
「とにかく、車には爆発物が積んでいるから火気厳禁。皆吹っ飛ぶんだからね」
『きゃ!狙うとこだった!』
漸く桃花は事の重大さに気づいた。
「狙うは今脱出したあの――」
『つまり、デブ狸と存在が女性の冒涜さん?』
さっきの戸惑いはどこへやら。毒舌が冴えわたる。
「……そうよ」
ガクッと拍子抜けする千椛。だが
『えーっと、えーっと、車に向かわなきゃ良いから……』
如何やら何かに戸惑っていたようだが、何かを分かった途端に通信が途切れ、銃の発砲音が響いた。
直後に火災旋風の三つが川へ自ら入って消滅。どうやら数を減らして調整をかけたようだ。
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