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火災旋風は五分ほど彼女達を燃やし続けた。そしてその後、ゆっくりと縮んでいき、そこにこんがりと焼けて煤けた二人が地上に降り立った。
呆然として突っ立って上の空、そして口から黒い煙を吐いているその姿は誰が見てもマヌケの権化そのものだった。
「……ワー、お手上げさ」
「うちはもう逃げられまへんわ」
そこにレイル達が駆け寄ってきた。
「ははは、こりゃあ間抜けよ」
指さしてソニアが爆笑した。
「完全に観念したようね」
腕を組んだレイルは黒焦げのマヌケの権化二体に口元が笑った。そして彼女は右腕をあげる。
その合図に千椛と姫乃が権化二体に手錠をはめた。
「……午後1322時。破壊性爆発物無許可使用、公共地危険運転違反、殺人未遂、公務執行妨害の現行犯逮捕」
梓が罪状を読み上げたが、それでもこの間抜けの権化は上の空だった。
*
事件は解決した。
毒島喜利子、野良チヤ子は事件発生二週間前に街の求人情報板の前にいたところを知切信貴菜に現金輸送車強盗を持ち掛けられたと証言した。当時二人の持ち金はほぼ底を尽きており、大金を手に入れられるこの仕事に心躍ったという。
因みに毒島喜利子は現在自分の父親が武の国の裕福かつ責任ある地位にいることを一切知らず、そのことを告げると自らの境遇の差への不満への文句をぶちまけながら激高し取調室の机や椅子を破壊したのでその分の罪も追加された。
また知切信貴菜自身の過去の殺人や爆破物使用を含む余罪も追及されるという。
因みに
「このボケナス!!またスカイラインを壊したな!!如何したらモノを大事に扱うことを覚えるんだ、この馬鹿犬畜生!!」
円が壊れたスカイラインを見て捜査・警護課に殴り込みに来るも、何とか課の入り口前で抑えられて十人がかりで撤収させられたのは言うまでもない。
何とか命拾いした千椛とソニアだが、あの仕事を放棄しているようにしか思えない態度と乗り込んでくる時の烈火の如くの怒りには溜息をついて頭を抱えるのだった。
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