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「――ってことなのよ、雅ちゃん」
「へぇ。レイルさん、それは今日も大活躍ですね。相変わらず素敵ですわ」
午後六時半、レイルは
「さあ、新人の歓迎を兼ねてフリゲンダーブライシュティフトに予約を入れたんだから。皆、盛り上がらないとね」
道路挟んで向かい側にある、蔦で覆われた緑の切妻トタン屋根の白色の鎧壁の料理屋『フリゲンダーブライシュティフト』にて事件解決の祝いと桃花と杏花の歓迎会を催した。
「あー良かった。今日ここのスープカレー食べたかったんだ~」
ソニアが年甲斐もなく空腹のアピールをする嬉しかったようだ。
カウンターの向こう側にいる左目に大きな傷があるエプロン姿の女主人は微笑んで
「はいはいソニアさん。チキンのスープカレーですよ」
と出来立てを渡してきた。
「ありがとう雅さん!」
喜ぶ顔がなんともかわいらしいソニアを見て、女主人はより微笑みが輝く。
「で、隊長。その二人の子が今度の新入りさんかしら?」
その女主人の隣にいる同じデザインの色違いのエプロン姿のもう一人の女性がレイルに尋ねる。
「そうそう白雅ちゃん。紹介するね」
とレイルが紹介しようと桃花と杏花のいる方向へ振り向くが
「アタシは下山桃花です!」
「ウチは下山杏花。桃花とウチは双子だよ!」
と先に自己紹介をした。
「あら、あなたたちも双子なのね。私は七瀬白雅、宜しく。ふふふ」
「私は夏野雅。私たちも双子なのよ。私が癖っ毛だから容姿は似ていないけどね」
雅は白髪で癖っ毛のロングヘア。その一方の白雅は白髪だがストレートでショートヘア。それに大きな差ではないが身長も少しだけ雅が高く見えた。
「あれ、名字が?」
桃花が二人の名字が違うことにも気付く。
「ああ、私達はつい先日に結婚した同士ですわ。だからそれぞれ名字が変わったの。でもお店ではこれまで通り前の名字の『大加持』を使って行くわ」
と白雅が答えた。その笑って口元を抑えた左の薬指には確かに婚姻の証だろうか、しっかりと銀の指環が光っていた。
一方の雅もその会話に反応し、左手の甲をカウンターの面々に見せるようにした。彼女もまた薬指に白雅と同じ指環が光っていた。その顔はニコニコである。
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