鳥小屋ポスト

1/1
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ

鳥小屋ポスト

俺は、建て替わった我が家を見上げていた。 ひい婆ちゃんが死んだのをきっかけに、築50年の家は新しく生まれ変わった。広かった庭も、今では半分ほどの広さになり、当時植えられていた植物たちは全て取り払われていた。 夏になると蝉がたくさん群れて煩かった山桜も、家が建った時に植えられた銀木犀も、庭の隅にこっそり育っていた月桂樹も、金柑も、ツツジも、椿も、薔薇も、ナンテンも、紫陽花も、水仙も……ひい婆ちゃんがマメに手入れをして、どれも綺麗に咲いていた。あの庭が大好きだった俺としては、少し…いや、だいぶ寂しさを感じていた。 俺は部屋に向かい、窓辺に目をやった。そこには去年の夏休みの自由工作で作ったポストが座っている。庭にそびえ立っていた銀木犀を倒したとき、わがままを言って少し切り分けて貰ったのだ。 まだ殆どの荷物が運べていない中、昨日、一番にここに置いた。窓からは、狭くなった庭が一望できる。 見た目は鳥小屋のようなポスト。だが、ここにいる以上、本来の役目を果たすことはない。 俺は寂しくなった庭を眺めながら「特等席だな」とポストに手を乗せた。すると、カコンと中から音がして俺は数秒固まった。おもむろに持ち上げ軽く揺らしてやる…やはり、中から音がした。 元の位置へ置き直すと、俺は一度深呼吸をしてポストの口を開いた。…そこには1通の手紙があった。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!