メランコリックラバー ~「背中合わせで恋をする」番外編2~

2/28
前へ
/28ページ
次へ
「やっと……やっと会えたー!!」  挨拶をする前に思い切り抱きつかれた琴莉は、危うく後ろに倒れそうになる。咄嗟に隼人が支えて事なきを得るが、隼人は彼らしくなく不機嫌な顔で、琴莉とその人物を引き剥がした。 「姉さん、危ないだろ!」 「ごめんごめん! そんな目くじら立てて怒らなくてもいいじゃない! ね、琴莉ちゃん」  これでもかといったほどに整った顔を近づけられ、妖艶な笑みを見せられると、同性とはいえドキドキせずにいられない。 「は、はいっ」 「やだぁ、琴莉ちゃんって本当に可愛い!」  再び抱きつこうとするのを阻止するように、隼人は琴莉の前に出る。すると、女性は唇を尖らせ、隼人を睨みつけた。 「何よ、もう! 可愛い子は皆のものよ。隼人だけ独り占めなんて許さない!」 「誰が皆のものだよ! 琴莉は僕のものだし!」 「あ、あの……隼人……さん?」  琴莉は顔を俯けたまま、小柄な身体を益々小さくする。  何故なら、ここは『KIRISHIMA』関西支社の営業部のフロアだからだ。フロア内には外回りに出る前の社員もまだ多くいて、全員の目がこちらに釘付けとなっている。 「やだな~、隼人君ったら~。こんなところで独占欲剥き出しなんて、余裕なーい!」 「……JKみたいなしゃべり方しても、もう可愛くないんだけど」 「隼人? 普段からとーーってもお世話になってるおねーさんに向かって、その暴言は取り消した方がいいんじゃなぁい? でないと……」  女性は腕を伸ばし、隼人の襟首をグイと掴んで自分に引き寄せた。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1283人が本棚に入れています
本棚に追加