1283人が本棚に入れています
本棚に追加
「やっと……やっと会えたー!!」
挨拶をする前に思い切り抱きつかれた琴莉は、危うく後ろに倒れそうになる。咄嗟に隼人が支えて事なきを得るが、隼人は彼らしくなく不機嫌な顔で、琴莉とその人物を引き剥がした。
「姉さん、危ないだろ!」
「ごめんごめん! そんな目くじら立てて怒らなくてもいいじゃない! ね、琴莉ちゃん」
これでもかといったほどに整った顔を近づけられ、妖艶な笑みを見せられると、同性とはいえドキドキせずにいられない。
「は、はいっ」
「やだぁ、琴莉ちゃんって本当に可愛い!」
再び抱きつこうとするのを阻止するように、隼人は琴莉の前に出る。すると、女性は唇を尖らせ、隼人を睨みつけた。
「何よ、もう! 可愛い子は皆のものよ。隼人だけ独り占めなんて許さない!」
「誰が皆のものだよ! 琴莉は僕のものだし!」
「あ、あの……隼人……さん?」
琴莉は顔を俯けたまま、小柄な身体を益々小さくする。
何故なら、ここは『KIRISHIMA』関西支社の営業部のフロアだからだ。フロア内には外回りに出る前の社員もまだ多くいて、全員の目がこちらに釘付けとなっている。
「やだな~、隼人君ったら~。こんなところで独占欲剥き出しなんて、余裕なーい!」
「……JKみたいなしゃべり方しても、もう可愛くないんだけど」
「隼人? 普段からとーーってもお世話になってるおねーさんに向かって、その暴言は取り消した方がいいんじゃなぁい? でないと……」
女性は腕を伸ばし、隼人の襟首をグイと掴んで自分に引き寄せた。
最初のコメントを投稿しよう!