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「琴莉さんとお買い物に行ったの、すっごく楽しかったわー。何十年も若返ったみたいー! と、母から自慢され、父さんの作った料理を美味しい美味しいと言って、本当に嬉しそうに食べてくれたんだよ。素敵なお嬢さんだったなぁ、楽しかったなぁ、また会いたいなぁ……と、うっとりした声で父から自慢され。という訳で、娘としては対抗心が湧き上がってくるわよね!」
「そんな対抗心いらないから!」
即座に隼人がツッコむと、彩は瞳をキラキラさせて隼人の背を強く叩く。
「おぉ! いいツッコミ! 隼人もこっちでやれるんじゃない?」
「何をだよ……」
隼人がすっかり疲れ果てている。
どんなに仕事で疲れていてもこんな顔を見せたことがないのに、さすがの隼人も家族にかかると形無しだ。確かに圧倒されるほどの勢いなので、それもよくわかる。
「だから、寄るの嫌だったんだよ……」
彩には聞こえないようにこっそり呟く隼人を見て、琴莉は必死に笑いを堪える。
以前、神戸でメイクイベントがあった際、関西支社のメンバーに応援に来てもらっていたというのに、社には寄らなかった。他ではいつも顔を出しているのに、と不思議に思っていたが、こういうことだったのか。
「関西支社の皆さんにはいつもお世話になっています。こちらこそ、顔を出すのが遅くなってしまい、申し訳ございません。そして、いつも助けていただき、ありがとうございます」
琴莉は感謝の気持ちを込めてもう一度頭を下げる。そして、顔を上げてギョッとした。
「あの……?」
彩の瞳が大きく見開き、身体が小刻みに震えている。何となく身の危険を感じたその時、隼人がすばやく動き、彩をブロックした。
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