メランコリックラバー ~「背中合わせで恋をする」番外編2~

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「は、隼人さんっ!」 「隼人!」  隼人は彩の頭を片手でガシリと掴んでいたのだ。そのせいで彩の綺麗に整えられた髪がグシャグシャになっている。 「だから、琴莉は僕のだって言ってるでしょ? そう何度も抱きつかないでもらいたいんだけど」 「まだ抱きついてないっ!」 「阻止したんだよっ!」  琴莉はキョロキョロと辺りを見渡し、ペコペコと頭を下げる。営業部の人たちは、生暖かい目でこちらを見ていた。彼らの様子を見ていると、この姉弟の関係はどうやら周知されているらしい。  本社の人間もきっと知っているのだろうが、琴莉が『KIRISHIMA』に入社してから彩が本社に立ち寄ったことはなかったので、琴莉が知らなかっただけなのだろう。 「男の嫉妬心ってやぁねー。琴莉ちゃん、ほんっとこんな男でいいの!? あ、でも二人が結婚しなきゃ、琴莉ちゃんが私の妹にならないし……チッ」  チッ……この美貌で舌打ちをされると、妙に迫力がある。 「もう行くよ。顔出せってうるさいから顔出したけど、もう出さない!」 「いいわよ、別に。琴莉ちゃんは顔出してね。待ってるから!」 「え……あ……」  琴莉が返事をする前に、隼人はさっさと営業部のフロアを後にする。琴莉は半ば拉致されるように、強引に連れ出された。
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