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前略 突然このような手紙を受け取り、大変驚いていることと存じます。しかし、どうしても伝えたいことがあり、手紙を送らせていただくことにしました。
私がお伝えしたいのは、あなたのお父様、文章さんと私のことです。私が24歳の時から文章さんが亡くなるまで約20年、私と文章さんは不倫の関係にありました。
私が26歳のときです。当時、あなたのお母様の茜さんは、子供が出来ず夫婦仲は冷えていました。私は文章さんの子供を妊娠しました。喜んでもらえましたが、その後掌を返したように堕胎をするよう言われました。なぜなら、茜さんがあなたを妊娠したからです。私は泣く泣く子供を堕ろしました。文章さんは私の生活を保障してくれ、その後も事あるごとに離婚をして私と一緒になる約束をしてくれていましたが、とうとうその約束は果たされずに亡くなってしまいました。
私は今一人です。私は、私の生活を、日々の喜びや悲しみを誰にもいうことができず、ずっと日陰を歩いてきました。私はずっと考えていました。どうして私はこのような人生を送らなければならなかったのかと。それは一重にあなたの存在でした。あなたさえ存在することがなければ、私にも違う道があったのに、私の子供も存在することができたのに、ということが頭の中から消えません。このことについて、あなたは一体どうやって償ってくれるのでしょうか。
以上が、私があなたにお伝えしたかったことの全てです。今後、私がこのような手紙を送ることは一切ありませんが、どうかあなた自身の責任について考え続けていただけることを、私は願ってやみません。
草々
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