放課後の裏路地

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放課後の裏路地

高校1年の6月 学校がつまらなかった 好きになれそうな男子はいない 友だちになりたい女子もいない この際 思いっきり勉強して 少しでもイイ大学にはいろうか そうすればイイ男が見つかる確率が上がる 放課後 ブラブラと街を歩く 本屋で立ち読みしたり 面白そうな文房具を探したり おや? こんなところに細い路地が 喫茶店か 飲み屋か バーか 昭和時代の遺物のような ケバイ看板が並んでいて 私はちょっとした冒険心と好奇心から その裏路地を歩いてみたくなる 路地は迷路のように 右にしか行けなかったり 左にしか行けなかったりしながら とうとう行き止まりになる 行き止まりになった先に立ちはだかるのは 『キャバレー 黒薔薇』 という看板のある 妙なデザインの建物 アント二・ガウディの『カサ・バトリョ』を真似して 予算の関係でテキトーに  ごまかしたみたいな コンクリートに少しだけ タイルを散りばめた建物 おや? ピアノが聞こえる リストの『ラ・カンパネラ』だ 私は幼稚園時代からピアノを習っている 一人のヒマつぶしには 最高のパフォーマンス その古いキャバレーから聞こえるピアノの音色は 切なく美しいのだが 独特の間合いが胸をときめかせ 聴いているうちに背筋がゾクゾクしてくる どんな人が弾いているのだろう 気がつくと私は 薄暗がりの階段を上っていた 階段を上ったところに店の入口らしき扉が 半開きになっている ピアノはその中から響いて来る
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