病室

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病室

   「突発性減少性紫斑病という難病指定の病気ですね」 病院の診察にて、思ってもいない言葉を医師から宣告された。 「な、難病ですか」 隣では、母が困り果てた表情でその言葉を繰り返す。 「あ、あの。もしかして僕、死ぬんですか」 当事者である僕。 恐怖が頭の中でいっぱいで、第一声に出てきた言葉は真面目だった。 「死の可能性もあり得なくは無いですが、それは最悪の場合です。きちんと薬を飲んで治療を行えば大丈夫ですよ」 「そ、そうですか」 人生で医師とこんな会話をするなんて思ってもいなかったし、今はいた言葉は、漫画やドラマではみたことあるシーンで、実際にこんな一部始終を経験するなんて思ってもいなかった。 「入院という形でよろしいですか?」 「はい、よろしくお願いします」 それからは、隣にいた母親と、正面でこれからお世話になるだろう医師の先生が喋っているのを聞いているだけだった。 しかし、聞いていると言っても、まともに他人の話を聞いていられるほど僕の頭は冷静ではない。それもそのはずで、僕は今医師から死ぬ可能性もあり得る、という言葉を聞かされている故だ。 そんな「死」という恐怖が頭をぐるぐると回っていた。 自分が今置かれている状況を考えれば誰でもこのくらい混乱する。 「よろしくお願い致します」 母の声が聞こえ、なんの話も入ってこないでいた僕は少し遅れて先生に頭を下げた。 しかし、これからはこの先生に健康状態などをみてもらう、それに対して放った母の言葉なのだろうと解釈した上での行動でもあった。
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