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だんだん近づくネームプレート。
そこには僕の名前が書かれていた。
それと、よく見ると[竹田泰弘]と書かれたネームプレートも貼ってあることに気がつく。
「入る前に確認だけど、あまりうるさくしないように、他の人もいるからね」
「はい」
「はい、じゃあ入るねー」
そう言って、看護さんは病室のドアを開けた。すると目の前には、見晴らしの良い外がめにはいった。
これはやばいな。頭の中で死を確定した。
「こんにちは、竹田さん」
「おーう、元気か」
看護さんは入ってすぐ左隣の患者と会話を少ししてから、病室の一つ右奥まで歩いて行った。僕はその後を少し遅れて続く。
「はい、ここです」
「…」
「景色いいでしょ?」
「…」
ただ頷くだけにしておく。
「じゃあ、お母さん来るまでここにいてね」
そう言うと、最後にトイレの位置を教え何処かに行ってしまった。
病室には、僕と竹田さんしかいないようだ。僕と竹田さん以外に、空白のベットが2つあり、最大4人の病室。けど名前は僕と竹田さんしか書いていなかったからきっと2人だけだろう。
ベットの上に座り景色を眺めてみた。
きっと死ぬんだ、そんな事を考えていると病んできそうだ。
目を開けて景色を眺めたまま、だんだん自分が弱って行く姿を想像してしまう。
そして重いため息をついた。
「おい、小僧!幸運が逃げるからため息はつくな」
「へ?」
後ろから先ほど聞いた声が僕に向けて放たれた。
「何を心配してるか知らんが、俺に迷惑だけはかけるなよ」
「あ、すみません」
割と大きめの声で威圧され、反射的に振り向いてしまう。そして、気づいた時には竹田さんに誤っていた。
ぶつぶつと文句を言いながら竹田さんはそっぽを向いてベットに寝転がった。
なんだこの人、偉そうに。
ただため息をついただけで怒る奴がいるか。
本当に嫌だ。ついてないや。
病室内、一緒になる人がこんなんじゃ、やってけないよ。
どうして死にそうな僕がこんな人に気を使わなきゃいけないんだ。
文句の一つや二つぐらいじじいに言ってやりたくなったけど、これから先の事を考えて、直ぐにその文句は頭の片隅に埋めた。
「はぁー」
僕もベットに横になり、誰にも聞こえない小さなため息をついた。
今度は竹田さんには聞かれていないみたいだった。
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