あの頃の君は今…

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あの頃の君は今…

 25歳のころ直子は恋をしました。 まあいわゆる社内恋愛?というのでしょうか。 それまで直子と係わりのある人はおじさんばかりで、 そういうことになることはありませんでした。  ある日、直子が取引先の男性と仕事の話をしている時に、 突然地震が起きました。 「あっ、地震だ…。」 と彼が静かに言い、その瞬間、直子の目と彼の目があい、不思議な感覚が…。   なんだか、脳と脳が交信し合う。みたいな…。 波長があったのでしょうか。  それからしばらくして、直子は彼の電話番号を知り合いから聞き出しました。 彼女から男の人にアプローチするのは初めてで、とてもドキドキしました。 「もしもし、こんにちは、山田さんのお宅ですか?河原直子です。」 「えっ?どうしたの?」と彼。 「あのー。福原さんから電話番号を教えてもらって…。」と私。 「なんだ、そうなんだ…。うーん、今ちょっと暇だから、ちょっとどこかでお茶でも飲まないかな?」と彼。 ゛なんか誘われちゃった。お茶でも飲まない?なんて、なんだか誘いなれてる感じだな?゛なんて思いながら、数十分後に合う約束をしました。  少し郊外にあるベーカリーカフェで約束通り会い、なんてことはない話をしたのでした。 「なんだかここに転勤してきてから、いいことばかりあるんだ。」 そう言いながらコーヒーを口に運ぶ彼を見ながら、 ”ってことは、私が彼にちょっかいを出していることがうれしいってことなのかな?” 直子はそう思いました。 なんだかあまりにもすんなりと、彼といることが当たり前のような空気に直子は居心地の良さを感じました。 友達と話をしているみたいな差しさわりのない雰囲気で、ドキドキするよりも温かさを感じていました。 しばらく彼の昔話を聞かされた後に、また今度遊びに行こうねということでその日は別れました。  それからは、まるで友達の延長のようにご飯を食べに行ったり、お酒を飲みに行ったり、ドライブに行ったりしていました。  彼と付き合い始めて数か月がたった頃、祖母から直子にお見合いの話がありました。 「私付き合ってる人がいるから。」と祖母に言うと、 「それなら家に連れてきて話をしましょう。釣書も貰ってきなさい。」 ということで、彼に相談すると、何と直子に釣書をくれるではありませんか。 なんだか、順調に進む話にいままで縁がなかった彼女は、有頂天になっていました。 ”幸せってこういう風に進んでいくんだ。” 直子はそう思っていました。 そして、彼を自宅へ招待したのは良いものの、彼女が想像していたような対応ではなく、彼を責める図。 お茶も出さず、祖母と父親でどういうつもりでうちの娘と付き合ってるのか?と… 有頂天になっていた直子は彼のことも気遣わず、自分だけ幸せだと思っていました。 「家の人に僕のこと、どう話してるの?」 「まだそんなに付き合ってないからよくわからないって言ったけど。」 「結婚したら親戚づきあいとかあるし、たぶん僕の家とは合わないんじゃないかな。」 「でも、本人同士の問題じゃないの?ずっと転勤してて、親といつも一緒にいるわけじゃないし。」  彼としては直子とはそう長く付き合っているわけでもなく、深い関係でもないのに、親がでてきて、付き合っているのが悪いように言われ、かなり迷惑していました。 自分のことしかわからなかった直子は、それでもまだ付き合っていけると思い込んでいましたが、結局のところ別れることになったのです。 「やっぱりこのまま付き合うのは無理だ、別れよう。」 と直子に冷たい言葉を投げつけました。 あまりにもバッサリ切られ、嫌だと言うことも思い付かず、直子は素直に承諾しました。 彼とは別れましたが、会社では顔を合わせ仕事を一緒にすることもあり、 その後、直子はかなりつらい時間を過ごしました。  そして数年後、直子は縁あって他の人と結婚することになります…  
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