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直子は福原さんと連絡を取り、福原さんのご主人が山田さんのご両親にお墓参りに行きたいと言ってお墓のあるところを聞いてくれました。
福原さんは一緒に行ってあげようか?と心配してくれたけど、直子は一人で出掛けていきました。
お墓には、福原さんのご主人が上手く説明してくれていたので、迷うことなくたどり着きました。
直子は、
「山田さんごめんね。
あなたのことはずっと忘れられなかった。」
といいながら、その場にしゃがみこみました。
「いつか会える日があるかもしれないと思っていたけど叶わなくて、あなたは死んだのだと思い込むようにしていたの。
本当に死んでしまったなんて。」
直子は回りに誰もいないと思っていたので、ワンワン泣きました。
いままで山田さんに会いたくても会えなくて、それを我慢して我慢して死んだものと思い込むようにしていた気持ちが、今ここで堰を切ったようにあふれ出しました。
ひとしきり泣いて落ち着いた頃、誰かがやって来ました。
ハッとして顔を見ると、一度だけ会ったことのある山田さんの父親でした。前に会ったときから、10年以上の年月がたち山田さんの父親は少し腰が曲がって弱々しくなっていました。
「直子さんですね?
こんなことになるなら、あなたと結婚させてやるんだった。
私のことを恨んでるよね?」
「いいえ、もう過ぎたことです。私ももう結婚していますし、今は幸せです。」
「どうして?今はもう幸せで、うちの息子のことなんか忘れていると思っていたんだが?」
「山田さんのことはいつまでも忘れられませんでした。今更お墓参りなんて変だと思われるかもしれませんが、今まで山田さんと別れることに私は納得していませんでした。彼が亡くなってしまって本当に諦めることにします。だからお別れがしたかったんです。」
「そうなのか…。
うちの息子は、あなたと別れた後なかなか誰とも結婚しようとしなかったよ。
でも、あなたが結婚して幸せに暮らしているらしいと福原さんに聞いてからは、自分も結婚して幸せになろうと考えてくれるようになったんだ。」
しかし、以前からの持病が悪化して一年前から闘病していたそうです。
「肝臓が悪くてね。治療のかいなく、あっけなかったよ。」
山田さんの父親は、残念そうな顔でうつむきました。
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