月明かりの下でイチャつくな

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「本当に綺麗な月だが、キミのほうが魅力的さ」  男女のひわいな飛び交う声がイヤホンごしに聴こえた。今夜は満月が大きく見える。ハンディカムを構えて、満天の星たちを見上げている場合じゃなかった。再び、液晶モニターをのぞいた。映像が途切れて編集したと思わたら困る。今は身を寄せ合ってる姿を撮影する。 「九月一日、二十一時四十七分、さ、撮影を続行中」  俺の声は震えていた。男は美しい月より、女に夢中だ。女の細い手首を握り、にやついている。 「あっ、今、男が女の腕、握り始めています。えーっと、スカートの裾。スカートの裾に手が触れました」  まったく、ああっ、キスをし始めた。俺も必死になっていた。服のボタンを襟元から外した女が、男の膝上で座っている。恐怖で俺の心臓は、氷の刃で突きぬかれたようだ。  しかし、ここからでは、最大倍率でも細かい部分が見えづらい。居心地の悪さがあるが、もっと、近づかなければ。俺は意を決しした。ハンディカムを二人に向けながら、俺の靴が地面を踏む音だけがする。  二人に数メートルまで近づいた時、男の強い視線を投げられた。 「オメェ、誰や?!」
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