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男が起き上がりながら、にらみつけてきた。俺は懐中電灯で自分を照らしながら、冷静な声で応じた。
「看守の佐藤です」
「えっ! か、看守さんですか? すっ、すみません」
男は立ち上がりながら、着衣の乱れを直している。ベンチの前で、姿勢を正していた。俺は心の中で、素直な態度に関心し、安堵した。女は相変わらずベンチに、腰を下ろしたままだ。
毅然とした大きな声で、女に告げる。
「君も服を着てください」
女は、俺をチラッと見て、恥ずかしそうな表情をしていた。乱れた髪を手でとかす。そして、下着姿のまま、形の整ったバストを揺らしながら、重い腰を上げた。
「佐藤さん、お久しぶりー」
知らない顔のはずだ。たらしこまれたら大変だ! 受刑者に対して、隙を与えないのも看守の心得だ。俺は、後退りしていた。反射的に正当防衛用の、催涙スプレーを手に取る。ベンチに置きっぱなしの、彼女の服を撮影した。名札がアップになる。
「受刑者番号Sの35、園山実檸さん、看守を誘惑してる可能性があります。け、警告! こ、これ以上近づくなら、正当防衛公使として、催涙スプレーを使用する。園山実檸さん、早く服を着なさいっ!」
しかめっ面となった園山さんは、ベンチの上で膝を抱えて座っている。俺はふて腐れた態度に頭に血が上がる。今度は男の名札を確認した。受刑者番号Kの58熊本司瑯さんだ。
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