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「園山実檸さん及び、熊本司瑯さん。法令違反の可能性があります。速やかに、それぞれの家に戻りなさい」
園山さんの切れ長な瞳が、横目で熊本さんを射抜く。
「デートに誘ってきたのは、熊本さんなんですが?」
言葉を無視しながら、俺は腕時計のベルトのような、GPS発信機をふたつ、ベンチ近くに投げ捨てた。
「詳しい事情は、刑務本部で後日改めて聴くことになるでしょう。その時までこのGPS発信機を、装着してください」
熊本さんは屈み込みながら、GPS発信機を二の腕に装着していた。逃げるように、近くの茂みに隠して止めてあった、黒色の四輪駆動車に乗り込んでいた。
エンジンをかけ、路上に走り去って行く。
園山さんはGPS発信機を、白い太ももに通していた。フンと不機嫌そうにヘルメットを被りながら、大樹に立てかけてあった、赤い大型バイクにまたがる。
「佐藤さん、もう少し早く声かけなかったんですか?」
「証拠が必要でした」
スカートがはだけてるが、スルーした。
車もバイクも高価そうだ。二人とも羽振りの良い受刑者のようだ。
全く、きょうせい星の夜の巡回は疲れる。地球とほぼ同じ大きさの惑星全体が、一つの刑務所なのだ。受刑者達は惑星上に限り、ほぼ自由に移動と経済活動が出来る。
かつて、自然環境の破壊が進んだ地球では、人類が生存可能な惑星が見つかる度、ニュースになったそうだ。
二十六世紀の現在。地球の自然環境は、人口の減少も重なり、以前よりは改善されつつある。
地球上で刑務所を増やすのは、地域住民の反対が多く、刑務所専用惑星が必要になった。
受刑者の衣食住や、人権は完全に保証されている。しかし、さっきの公園における行為は、法令違反だ。
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