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寝る前に駐在所の外に出て、新鮮な空気で肺を満たす。
澄んだ夜空を眺め、地球より数倍大きな月を見ていた。きょうせい星で、月が再接近する時間帯だ。しかも、今夜は、俺の故郷。地球の太陽系が大きな月に隠れる数年に一度の夜だ。
懐かしの故郷。地球の太陽が小さな光点となり、月から顔を出した。あそこ、五百光年先だが、月の輪郭から出た。
「俺たちの太陽系だ!」
「わたしたちの太陽系。月の陰から、わわ、太陽が見えたー」
声の方向を見れば、熊本と園山が、駐在所隣の、だだっ広いコインパーキングで立っていた。二人は手を握り腕を絡めながら、目をお星様のように輝かせている。
「熊本さん、園山さん、まだ家に帰らずに居たんですか?」
「どうしても、月から出る太陽を見たかったんです。目で見えなくても、故郷の地球があの星を周っているんですよね」
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