月明かりの下でイチャつくな

7/10
前へ
/10ページ
次へ
 寝る前に駐在所の外に出て、新鮮な空気で肺を満たす。  澄んだ夜空を眺め、地球より数倍大きな月を見ていた。きょうせい星で、月が再接近する時間帯だ。しかも、今夜は、俺の故郷。地球の太陽系が大きな月に隠れる数年に一度の夜だ。  懐かしの故郷。地球の太陽が小さな光点となり、月から顔を出した。あそこ、五百光年先だが、月の輪郭から出た。 「俺たちの太陽系だ!」 「わたしたちの太陽系。月の陰から、わわ、太陽が見えたー」  声の方向を見れば、熊本(くまもと)園山(そのやま)が、駐在所隣の、だだっ広いコインパーキングで立っていた。二人は手を握り腕を絡めながら、目をお星様のように輝かせている。 「熊本(くまもと)さん、園山(そのやま)さん、まだ家に帰らずに居たんですか?」 「どうしても、月から出る太陽を見たかったんです。目で見えなくても、故郷の地球があの星を周っているんですよね」
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加