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彼女からの手紙
「はい、これっ!」
「えっ?!」
「この前の~……、返事」
「あ、ありがとう!」
この前、僕は、告白をした。彼女に、「好きだ!」と、告白をした。
すると、彼女から、「ありがとう。でも、返事は……、ちょっと待って! あなたのこと~……、私……、どう思っているのか、ゆっくり考えてみたいの」、とのことだった。
昼休み。
「お弁当を食べた後、体育館の裏に来て!」
と、僕は彼女から呼び出されていた。僕は、緊張のあまり、今日のお弁当の味は、全く、
「記憶にございませんッ!」
そして、その返事の手紙を、たった今、彼女から手渡されたのだった。
僕は、何が書かれているのか、ドキドキッ! ドキドキッ! 自分でも、顔が真っ赤なのが分かる。
彼女は彼女で、緊張した面持ちで、顔を赤らめていた。
「私の~……、気持ち……、書いて来た。ゆっくり~……、読んでね♪」
「あ……、ありがとう!」
「私、恥ずかしいから~、行くね!」
「お、おうっ! ありがとう!」
「う、うんっ! じゃあね♪」
「お、おうっ!」
彼女は、とても爽やかな笑顔で走り去って行った♪ 自分の気持ちをしたためた手紙を、やっと、僕に手渡せた~~~ッ♪ という清々しい感じだった。
「手紙、期待出来そうだ♪ 彼女のあの感じ♪」
僕は、気持ちが先走っていた。少々、期待がフライングぎみなのは分かっていたが、彼女への思いが膨らんで膨らんで、「これが青春だーッ!」と、彼女をギュッと抱きしめたい気持ちでいっぱいだった。
丁寧な彼女のことだから、OKならOKで、NOならNOで、すごく丁寧な長い文章が書かれているような気がしていた。
そして、いざッ!
手紙を、OPENッ!
右手の人差し指と親指を封筒に突っ込み、そろりそろり、便箋を引っ張り出した。
すると、意外や意外、
『すきだ!』
と、シンプルに書かれていたッ!
「ヤッターッッッ!!!」
僕は、もう、天にも昇る思いで喜んだッ! もう、ほんっっっと~~~に、うれしスギちゃんッ!
で、念のため、再び、封筒に右手の人差し指と親指を突っ込んでみた。
すると、もう一枚あった。
彼女から、『私の~……、気持ち……、書いて来た。ゆっくり~……、読んでね』、って言われていたから、恐らく、彼女の、僕に対する思いが切々と綴られているのだろう。
うれしいじゃないか、僕みたいな、イケメンでもなけりゃ~、おもしろいことの一つも言えない、全然モテるタイプでもない男に……。
神様、ありがトゥ~~~ッ!
僕は、再び、もう一枚の便箋を、そろりそろりと、引っ張り出した。すると、
『きらいだ!』
と、これまたシンプルに書かれていたッ!
「んっ? え、えっ?!」
『私の~……、気持ち……。ゆっくり~……、読んでね』
……って、ゆっくり読めないじゃんッ! こんなシンプルな文章、ゆっくり読めないじゃ~んッ!
『すきだ!』
『きらいだ!』
……って、僕のこと……、彼女は、好きだったり、嫌いだったり、何か、複雑な感情を抱いてくれているのか?
でも、それって~……、最初から嫌いな奴であれば、別に気にならないことでも、好きな奴だからこそ、許せなくて、嫌いだって感情もある。
そう言うことなのだろうか? 乙女心は、複雑だ!
……って、いやいや……。
そんな乙女チックで文学チックな、とても複雑な思いが入り乱れて云々、
……な~んてことじゃねぇ~ぞッ!
僕の場合ッッッ!!!
『好きだ!』
『嫌いだ!』
……じゃなくて~、
『鋤田!』
『嫌いだ!』
……ってことじゃんッ!
彼女、僕のこと、好きどころか、嫌いなんじゃんッ!
うわぁ~~~ッッッ!!!
終わったッ!
……んっ? えっ? 何ですか? 僕の~……、名前ですか?
『鋤田』と申しますけど~……、
何か?
『鋤田』の『鋤』が分からなくって、平仮名で書かれてしまう、『苗字が鋤田さんあるある』やないか~い!
ルネッサ~ンス!
……って、何か?
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