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花子、何がなんだか、家政婦になる
朝食はバルコニーの丸テーブルで。
ベーコンエッグとトーストの軽食も、海風と波の音が最高の調味料となり、この上なく美味しく感じられた。
なにより、同じテーブルに、薔薇の王子様みたいな浦島さんがいるもんな。トーストを齧るのもオレンジジュースを飲むのも、なにもかもサマになっている。
今年の暑さは異様だ。テレビでニュースになるほどの猛暑だ。
「この暑さが時空を歪めてしまった」
と、浦島さんは言う。さらっとした髪の毛に色白の肌。見とれてしまう。目の前にジャニーズのタレントがいるみたい。
「僕やかめが、こんなふうに君と巡り合えたのも、暑さのお陰なんだよ」
酷暑と言うけれど、悪いことばかりじゃないだろう。浦島さんはふわっと微笑んだ。ピンクの花びらがぶわっと舞い飛ぶみたい。
さっきから、浦島さんが何を言ってるのかサッパリ分からない。というか、浦島さんと相対している時点でもう、思考がぶっとんでいる。
浦島さんは、麗しい。それも、公害級に。
「あーっ」
いきなり、かめさんが叫んだ。日焼けした彫の深いお顔がムンクの叫びみたいに伸びている。あーっ、あーっ、あーっ。かめさんは両手をほっぺにつけ、汚物を見るようにこちらを睨むのだった。
「この小娘、サカってるっ、危険よ危険よっ」
浦島逃げて、いますぐ逃げて、喰われちゃう、頭からばりょばりょむさぼり喰われちゃううっ。
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