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事あるごとに「地球に帰りたい?」と博士は問う。
僕の声帯は博士の望む言葉しか発しないよう細工されているのに滑稽だな、と思う。
「いいえ。地球人は愚かで下劣。正しく下等生命体です。僕は博士と共に地球人に報復します」
何故か寂しげな微笑みを浮かべる博士の薄い唇が視界に大写しになってゆく。
ロボットにキスなんて滑稽極まりないのにどうしてしたがるんだろう。
反対側で小さくなるトーマの笑顔はそれでも消える事なく張り付いたままだ。
博士は知らないのだろうか。
それとも知っていて尚、僕の水晶体にこの映像を残したのだろうか。
胸と脳の回路は博士の行為にとても従順で、残存する生身の器官もそれに呼応する。
僕はいつも、視界に半分のトーマを宿したまま博士の慰みもので在り続ける。
目を閉じれば、僕の後孔を侵しているのがトーマだけのような錯覚が始まる。
だから目を閉じるのが眠っている時だけに限定されるよう、自分でプログラムを組み換えた。
─────そんな惑星Xの夢を見た後はいつも、瞬きが苦痛になる。
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